コラム
「ポストコロナ」のイノベーション⑨:コミュニティの力でコロナ感染情報を共有する
2020年07月15日
社会課題1-2. 今までと違う「接触方法」とは? (1. 人同士の接触を減らしながらビジネスを成立させること)
社会課題3-3. ITが解決するべき今まで見えなかった課題とは?(3. ITの新たな活用方法を提示すること)
「予想通り」期待外れの接触感染アプリ
社会課題3-3. ITが解決するべき今まで見えなかった課題とは?(3. ITの新たな活用方法を提示すること)
新型コロナウイルスの感染拡大を防ぐことができると、厚労省から鳴り物入りでリリースされた「接触感染アプリ」(COCOA)ですが、早くも暗礁に乗り上げています。
スマホにCOCOAをインストールして、Bluetoothを起動したまま第三者の1メートル以内に15分以上いれば、相手のデータが「接触情報」として互いの端末に記録されます。もし相手が陽性者であれば、陽性者と接触したことが自分のスマホにプッシュ通知されます。ただ、アプリは氏名・電話番号入力不要、GPS情報にアクセスなしで、接触情報は個人が特定できないよう暗号化されます。さらに、14日後、接触情報は自動的に破棄されます。プライバシー保護の観点からはよくできた仕様と言えます。
ただ、アプリは今のところうまく機能していません。ダウンロード数は(私を含めて)731万人(7月3日現在)に過ぎず(*1)、政府が「有効性がある」とする目標人数(人口の6割)の10分の1以下です。また、7月3日から7日までに、アプリで「自分は陽性です」と登録した人はわずか3人(!) でした。同時期に感染確認された人は全国で1100人以上もいた (*2)ので、滑り出しとしてはお話になりません。
接触アプリの構造的な限界
当初からアプリのダウンロードは伸びないと予想していました。日本人はプライバシーを気にする人が多く、マイナンバーカードを取得する人も全住民の15%(1910万枚、2020年1月)に過ぎません。(*3) プライバシーを気にするといっても、納税情報、住民情報、カード利用情報などは国や企業が既に吸い上げています。今さら何を気にするのかと思いますが、これも政府IT化の大きな足枷です。
ダウンロード数が伸びないこと以外に、「陽性者が自己申告する」という設計上の限界(欠陥)があります。「他人に感染させたくない」という気持ちはあっても、わざわざ自分が陽性になったことを人に言いたくないものです。陽性診断された人は、行動履歴を正直に語るとは限りません。陽性者はバッシングを受けるので、HIVほどではなくてもコロナ感染を隠すのはむしろ自然です。
投稿者匿名で痴漢被害情報を共有する(Radar Lab)
出典:acworks(写真AC)
感染当事者が正直に申告しなくても、第三者の助けによって周囲はリスク情報を共有できないか。この課題を解決する可能性があるのがRadarZというアプリです。開発したのはRadarLab株式会社(*4)です。
社長の禹ナリさんは、ヤフー知恵袋の元開発メンバーです。同社は、スマホの位置情報を使って、「身の回りのリスク情報」を「リアルタイム」で共有できるという、今まで探しても見つからなかった価値を提供してくれます。位置情報は、これまでマーケティングや出会いなどに使われて来ましたが、リスク情報への活用は世界的にも殆ど例がありません。
ナリさんたちは「痴漢情報の共有」という画期的なところから事業を立ち上げました。同社のアプリをインストールすれば、被害に遭った人は「遭った」、痴漢現場を見た人は「見た」のボタンをクリックすることによって、痴漢情報を「匿名」で投稿できます。
JR東日本は、このアプリを使って痴漢被害を車掌に通報するシステムの実証試験を行っています。(*5) 通報されれば車内放送で注意喚起され、周囲の雰囲気が変わるので、痴漢も事に及びにくくなります。「盗撮」「不快行為」などの通知も受け付けています。
事件・事故を防ぐのでなく、「遭いにくくする」ソリューション
ナリさんによると、このアプリは「事件・事故に遭いにくくなるソリューション」であり、ユーザー参加型セーフティーコミュニティを形成できます。また、アプリの「ユーザーによる被害登録⇒被害の可視化⇒コミュニティでの共有」というプロセスは、痴漢撃退以外に応用範囲が広い。
東京の「○☓区で△△人のコロナ感染者が出た」という情報は役に立たないわけではないが、住民は「どこで、どんな状況で何が起きた」というより特定された情報を求めます。それがアプリによって分かれば、行動変容や安心につながります。また、道路危険情報(ヒヤリハット)が分かれば、自動運転や新たな自動車保険商品の開発につながります。
コミュニティからの情報提供というのは、悪意がある情報、フェイク情報が必ず交じり、それが情報の信頼性に影響します。RadarLabは、同じ人の複数回投稿、ブラックリストなどを参照しながら、投稿者の信頼性に応じてデータ選別するアルゴリズムを使って、信頼性リスクに対応しています。
「ポストコロナ」の社会課題:
http://www.lab.kobe-u.ac.jp/stin-innovation-leader/column/200430.html
(*1) Yahoo! ニュース 2020年7月12日:
(*2) NHKニュース「接触確認アプリ 感染者からの登録 3人にとどまる 新型コロナ」2020年7月8日:
(*3)朝日新聞デジタル2020年3月7日:
(*4) RadarLab株引会社HP:
(*5)週刊女性2020年7月14日号:
感染当事者が正直に申告しなくても、第三者の助けによって周囲はリスク情報を共有できないか。この課題を解決する可能性があるのがRadarZというアプリです。開発したのはRadarLab株式会社(*4)です。
社長の禹ナリさんは、ヤフー知恵袋の元開発メンバーです。同社は、スマホの位置情報を使って、「身の回りのリスク情報」を「リアルタイム」で共有できるという、今まで探しても見つからなかった価値を提供してくれます。位置情報は、これまでマーケティングや出会いなどに使われて来ましたが、リスク情報への活用は世界的にも殆ど例がありません。
ナリさんたちは「痴漢情報の共有」という画期的なところから事業を立ち上げました。同社のアプリをインストールすれば、被害に遭った人は「遭った」、痴漢現場を見た人は「見た」のボタンをクリックすることによって、痴漢情報を「匿名」で投稿できます。
JR東日本は、このアプリを使って痴漢被害を車掌に通報するシステムの実証試験を行っています。(*5) 通報されれば車内放送で注意喚起され、周囲の雰囲気が変わるので、痴漢も事に及びにくくなります。「盗撮」「不快行為」などの通知も受け付けています。
事件・事故を防ぐのでなく、「遭いにくくする」ソリューション
ナリさんによると、このアプリは「事件・事故に遭いにくくなるソリューション」であり、ユーザー参加型セーフティーコミュニティを形成できます。また、アプリの「ユーザーによる被害登録⇒被害の可視化⇒コミュニティでの共有」というプロセスは、痴漢撃退以外に応用範囲が広い。
東京の「○☓区で△△人のコロナ感染者が出た」という情報は役に立たないわけではないが、住民は「どこで、どんな状況で何が起きた」というより特定された情報を求めます。それがアプリによって分かれば、行動変容や安心につながります。また、道路危険情報(ヒヤリハット)が分かれば、自動運転や新たな自動車保険商品の開発につながります。
コミュニティからの情報提供というのは、悪意がある情報、フェイク情報が必ず交じり、それが情報の信頼性に影響します。RadarLabは、同じ人の複数回投稿、ブラックリストなどを参照しながら、投稿者の信頼性に応じてデータ選別するアルゴリズムを使って、信頼性リスクに対応しています。
「ポストコロナ」の社会課題:
http://www.lab.kobe-u.ac.jp/stin-innovation-leader/column/200430.html
1. 人同士の接触を減らしながらビジネスを成立させること
1-1. 人同士の接触が前提だった場所の変革とは?
1-2. 今までと違う「接触方法」とは?
1-3. オフイス、飲食店、スーパー、スポーツ、エンタメ以外に課題を抱える場所とは?
2. リアルな現場における人手不足を賄うこと
2-1. 医療、介護、工場、物流、店舗以外に問題が起きている現場とは?
2-2. 専門家、管理者、単純労働者など不足する人材の質に合わせた対応とは?
2-3. IT化やロボット活用以外に考えられる解決方法とは?
3. ITの新たな活用方法を提示すること
3-1. テレワークを実施するうえで起きる新たな課題とは?
3-2. DX(デジタル・トランスフォーメーション)の新しい姿とは?
3-3. ITが解決するべき今まで見えなかった課題とは?
4. ビジネスの新たなパラダイムを作ること
4-1. 新たな生活、仕事の目的とは?
4-2. 従来と異なるコミュニケーションとは?
4-3. 人々が持つべき新たなマインドセットとは?
4-4. 新しい家庭、病院、オフィス、店舗、物流、工場etc.の形とは?
1-1. 人同士の接触が前提だった場所の変革とは?
1-2. 今までと違う「接触方法」とは?
1-3. オフイス、飲食店、スーパー、スポーツ、エンタメ以外に課題を抱える場所とは?
2. リアルな現場における人手不足を賄うこと
2-1. 医療、介護、工場、物流、店舗以外に問題が起きている現場とは?
2-2. 専門家、管理者、単純労働者など不足する人材の質に合わせた対応とは?
2-3. IT化やロボット活用以外に考えられる解決方法とは?
3. ITの新たな活用方法を提示すること
3-1. テレワークを実施するうえで起きる新たな課題とは?
3-2. DX(デジタル・トランスフォーメーション)の新しい姿とは?
3-3. ITが解決するべき今まで見えなかった課題とは?
4. ビジネスの新たなパラダイムを作ること
4-1. 新たな生活、仕事の目的とは?
4-2. 従来と異なるコミュニケーションとは?
4-3. 人々が持つべき新たなマインドセットとは?
4-4. 新しい家庭、病院、オフィス、店舗、物流、工場etc.の形とは?
(*1) Yahoo! ニュース 2020年7月12日:
(*2) NHKニュース「接触確認アプリ 感染者からの登録 3人にとどまる 新型コロナ」2020年7月8日:
(*3)朝日新聞デジタル2020年3月7日:
(*4) RadarLab株引会社HP:
(*5)週刊女性2020年7月14日号: