コラム

「ポストコロナ」のイノベーション⑦: オフィスや工場の概念を刷新する

2020年06月19日
 
社会課題4-4「新しい家庭、病院、オフィス、店舗、物流、工場etc.の形とは?」(4.ビジネスの新たなパラダイムを作ること)


非常事態宣言が解除され、オフィス街や繁華街に人が戻ってきました。テレワークによって在宅勤務に移行できた仕事、医療・介護・小売・物流・工場などテレワークに移行できない仕事など、状況は様々です。ただ、皆に共通して言えることは、社会課題4-4「新しい家庭、病院、オフィス、店舗、物流、工場etc.の形とは?」をこの期間真剣に考えたことだと思います。

テレワークとオフィスワークのあるべきミックスとは?

これからコロナの第二波が起きるかもしれませんが、非常事態宣言が解除された後、果たしてどこまで以前の働く環境に戻す(戻すことができる)かが議論となっています。

① 基本的に在宅勤務を続ける(出社は最低限)
② 在宅と出社の組み合わせを行う(出社はある程度必要。ただし幅広い)
③ 基本的に出社を義務付ける(ほぼ元に戻り、多少テレワークを行う)
企業で働く環境は、これら三パターンが考えられます。

総務省が全国の企業を対象に行った調査(*1)によると、2018年時点でテレワークを導入済み、または導入予定の企業は全体の26.3%です。業種別では、情報通信業、金融・保険業は約40%が導入済み、対照的に運輸・郵便事業の導入率は10%未満です。二年前でさえこれだけ導入されているので、現在、都心に本社を構える企業の大部分はテレワーク導入済みでと思われます。今後、どっちをメインにするかは経営者の決断次第です。

サテライト・オフィスはただの不動産業ではない

ただ、同じテレワークでも、在宅勤務だけでなく、郊外や地方のサテライト・オフィスの併用が増えると思われます。これによって「都心の立派なオフィス」賃料がすぐに暴落するとは思いませんが、小型のサテライト・オフィス需要は確実に増えるでしょう。

不動産業界にとってビジネスチャンスです。しかし、テレワークを前提とすると、ただ場所を貸すだけでなく、結構多くの課題を解決しなければなりません。

① 入退室管理
② 勤怠管理
③ 社員による不正行為の防止
④ オフィス内で事故・アクシデントが起きた時の対応
⑤ 物理的な労働環境(空調、採光、騒音、家具など)の整備
⑥ 社員同士や顧客との(新しい)コミュニケーション方法の構築
ほぼ無人のオフィスで不正行為や事故が起きると、オフィス入退出の過去ログなどを調べ、社員に落ち度がないことを調べなければなりません。監視カメラは監視目的だけでなく、社員を守るためにも必要です。

上記6課題のうち最初の5課題は、サテライト・オフィスでなくとも、オフィスを開設するなら経営側が配慮しなければならない古典的な課題です。ただ、サテライトには思い立ったらすぐに開設する・閉じる機動性が求められ、都心のオフィスほどでなくても無視できないコストがかかります。WeWorkのように、こういった心配が不要な豪華シェアオフィスもありますが、高い家賃を払える企業はごく一部です。

また、6番目の「新しいコミュニケーション方法の構築」はまさにテレワーク時代の新しい課題で、何が必要か大半の企業が分かっていません。逆に言うと、この課題を解決することは無限のビジネスチャンスにつながります。

オフィス管理の課題をパッケージで解決する(セキュア)
出典:株式会社セキュア・ホームページ

上記課題に個別対処するサービスは多いですが、総合的なパッケージのソリューション提供は容易ではありません。それを行っているのが、株式会社セキュア(*2)の谷口 辰成社長です。同社は監視カメラ、画像認識のAI、入退室管理システムなどをパッケージで顧客に提供しています。元々監視カメラの販売からスタートし、今では多種類のデバイスを管理してシステム化し、オフィスの「セキュリティ」を提供しています。

今後、世の中でサテライト・オフィスが増えると、セキュリティ以外に勤怠管理、快適な労働環境、効率的なコミュニケーションなど解決しなければならない課題が一気に増えます。今まで主にセキュリティを考えていた企業も、カードキーによる入退出管理と勤怠管理を連携させなければなりません。週7日オープンなど無人の時間帯が長いオフィスでは、従来と異なる管理が必要です。

テレワークはコロナで生まれたものではない

今年突発的に増えたテレワークはコロナへの対応が主目的ですが、そもそもテレワークが注目されて来た理由は、生産性の向上や通勤時間の短縮でした。その意味で、今起きている大きな変化にとってコロナは単なるキッカケと言えます。

オフィス関係のAIを提供する企業は数多いですが、ソフトウェアだけではすぐに使えません。現場ニーズに合わせたハードウェアとソフトウェアの組み合わせを提供することが求められます。その点セキュアには、AIエンジニアと、脚立に乗って天井に監視カメラを取り付けるエンジニアの両方がいて、同じニーズに対応する競合他社との差別化になっています。

「ポストコロナ」の社会課題: http://www.lab.kobe-u.ac.jp/stin-innovation-leader/column/200430.html
1. 人同士の接触を減らしながらビジネスを成立させること
1-1. 人同士の接触が前提だった場所の変革とは?
1-2. 今までと違う「接触方法」とは?
1-3. オフイス、飲食店、スーパー、スポーツ、エンタメ以外に課題を抱える場所とは?

2. リアルな現場における人手不足を賄うこと
2-1. 医療、介護、工場、物流、店舗以外に問題が起きている現場とは?
2-2. 専門家、管理者、単純労働者など不足する人材の質に合わせた対応とは?
2-3. IT化やロボット活用以外に考えられる解決方法とは?

3. ITの新たな活用方法を提示すること
3-1. テレワークを実施するうえで起きる新たな課題とは?
3-2. DX(デジタル・トランスフォーメーション)の新しい姿とは?
3-3. ITが解決するべき今まで見えなかった課題とは?

4. ビジネスの新たなパラダイムを作ること
4-1. 新たな生活、仕事の目的とは?
4-2. 従来と異なるコミュニケーションとは?
4-3. 人々が持つべき新たなマインドセットとは?
4-4. 新しい家庭、病院、オフィス、店舗、物流、工場etc.の形とは?


(*1)総務省「平成 30 年通信利用動向調査の結果」(令和元年5月 31 日):
https://www.soumu.go.jp/johotsusintokei/statistics/data/190531_1.pdf

(*2)株式会社セキュアHP:
https://www.secureinc.co.jp/