都会サラリーマンの地方移住:冷ややかに見る人が無視できない「不都合な真実」とは?

都会サラリーマンの地方移住:冷ややかに見る人が無視できない「不都合な真実」とは?

前回、「地方創生の具体策:都会のサラリーマンは果たして地方移住を希望するのか?」という記事を書きました。地方創生政策の目標に、都会から地方への人口移動を促進するという項目があります。そこで、大企業のミドル人材(プロ人材)の能力や経験を地方企業の成長に役立てるというテーマに関して、その意義と問題点について述べました。

賛否が別れる大企業ミドルの地方移住

大企業ミドルの地方移住について多くの方々からコメントをいただきました。「ミドルは中国・韓国企業に転職するのでなく、日本のためにもう一肌脱ぐべきだ。」「高齢者になってからの地方移住では遅い。働けるうちに環境を変えた方が良い。」「大企業では最先端でなくなった技能でも、地方ならば十分に生かせるはずだ。」「地方は物価が安く住環境も良い。」「親の介護のため戻りたい。」という移住に対して肯定的な意見が多く聞かれました。6月13日の日本経済新聞によると、介護環境が整った202自治体が、都会の高齢者を受け入れることに関心を示していますが、これもミドル移住の後押しになるでしょう。

一方、ミドルの地方移住に否定的な意見も多く聞かれました。「地方の活性化であれば、人よりも企業が地方に移転する方が効果的だ。」「住む場所を国に決められたくない。」「都会と地方の年収格差が大きいから移住は難しい。」「都会の方が総合的に住みやすいから地方へ人が移らないのだ。」といった声が代表的なものです。

住む場所を決めるのは極めてパーソナルな問題なので、様々な反発が出るのは当然かもしれません。また、企業は社員を社命で地方に転勤させることはできても、地方への転職を命令することはできません。「サラリーマンの地方移住=リストラ」と連想する人もいるので、国が旗を振っても、企業経営者は発言しにくいという事情があります。

ミドル社員が増え続ける「不都合な真実」

では、ミドルの地方移住は結局進まないのでしょうか?実は、それでは済まされない「不都合な真実」があります。それは、サラリーマンの年齢別構成比率データです。今後、長期にわたりミドル人材が増え続けるのです。

リクルートワークス研究所の調査によると、2010年に全労働力人口(65歳以上は除く)の43.5%を占めていた45歳~64歳の層が、2020年には48.4%まで増えると予測されています。特に、45歳~54歳の層は28.1%を占め、全体で最大のグループを形成します。(図1)

さらに、この状況は継続します。理由は、バブル入社世代(1989~92年入社)と団塊ジュニア世代(1993年~96年入社)という社内人口が多い世代が50歳代に突入するからです。団塊ジュニア世代が60歳になるまで、まだ20年近くあります。(図2)

企業経営者にインタビューすると、大企業からは「40~50歳代の余剰感が強いです。」、中堅・中小企業からは「40~50歳代が不足しています」という返答が来ます。これは印象ではなく、不都合な真実で裏付けられています。(図3)既に40歳代後半になっているバブル入社世代の特徴は、大企業に就職した人が多いことです。これから10年近く大企業での「ミドル余剰」が続くことが分かります。

ミドル余剰を生んだ子会社のリストラと「65歳定年制

大企業のミドル余剰は、何も人口構成比だけが原因ではありません。日本の企業経営の構造変化が一方の大きな要因となっています。

会社はピラミッド組織なので、年齢が上がればポストが減り、ミドル人材が必然的に余る構造になっています。別にそれは高齢化が進んだ2000年代だけでなく、高度成長時代からずっと続いていた構造でした。そこで、大企業は子会社を多く作って、ポストがなくなったミドル人材を出向、転籍させて対応してきました。親会社ではポストがなくなっても、子会社の管理職に就いて、比較的幸せなサラリーマン人生を送ることができたのです。

特に、1990年代前半までは経済成長によって大企業の新規分野進出が増え(子会社の大量生産)、ミドルを含め人材が足りなくなりました。この流れを変えたのが、バブル崩壊と2000年前後の金融不況です。日本企業は「ヒト、モノ、カネ」の余剰に苦しむことになり、経営資源のリストラに走りました。特に、子会社や本業と異なる事業は「選択と集中」に従って、リストラの標的になりました。ミドルの出向受け皿だった子会社を失った大企業は、彼らを社内で抱え込まざるを得なくなり、余剰が増えたのです。

子会社、関係会社の状況は業種によって異なります。概ね、一番状況が厳しいのはメーカーです。総合商社は社内カンパニーごとに分社化が進んで、子会社への出向は依然多く、本社にミドル余剰問題は少ない。ただ、あくまで「本社」の事情で、子会社の余剰問題は異なります。また、不動産業界や建設業界は未曾有の好景気を享受しており、むしろミドルやシニアを本社に呼び戻しています。さらに、「半沢直樹」で描かれているように、銀行業界は融資先企業にミドル社員を出向させていますが、そんな離れ業ができるのは銀行だけです。

業種によって問題の深刻度は異なるのですが、ミドル余剰が増える方向性は皆一緒です。景気が後退すれば、不動産や建設の状況はすぐ変わるし、銀行でさえ、出向先を探すのが難しくなっています。

ミドル余剰問題にダメ押しをしているのは、60歳以上のシニア社員の再雇用です。形式は様々ですが、企業(大小を問わず)は65歳まで社員を雇用しなければならなくなりました。60歳過ぎると給与が下がりますが、大企業の50歳代は元々の給与ベースが高いので、下げるといっても世間では安くない水準です。また、会社がシニア社員に手厚ければ、ミドル社員は地方に移ることなど考えないでしょう。

今が持続可能ではないなら、早く行動する方が得

以上のようなバランスが働いて、大企業のミドルは地方移住にあまり興味を示さないのが実態だと思います。ところが、問題は「不都合な真実」があることです。今の状況は持続可能とはとても言えません。

シニア、ミドルが余剰で重石になれば、若年雇用が阻害され、年下の管理職の仕事に悪影響を与えます。人事を停滞させ、企業競争力まで阻害します。シニア、ミドルに社内失業者が増えます。そうであれば、「ずっと大企業ブランドにぶら下がるより、早めに外に出よう。」と考えることが先を見据えた行動ではないでしょうか。

こう考えると、転職先は地方の中堅・中小企業に限りません。都会の中堅・中小企業やベンチャー企業も当然対象になります。行き先を選んだら、「たまたま地方だった」というのが、これからの方向性かもしれません。

中堅・中小でもミドル余剰が起きる

最後にもうひとつの不都合な真実について述べます。大企業に余剰感が大きいのはバブル入社世代ですが、その後の団塊ジュニア世代は中堅・中小企業へ就職した人が多いです。(図3)つまり、中堅・中小企業でも今の大企業と同様、ミドル余剰問題が早晩発生すると思われます。今は売り手市場の「大企業⇒中堅・中小」という流れが買い手市場に変わるかもしれません。そうであれば、早く行動した方が得になります。

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