福島第一原発汚染水問題の本質を見誤るな:現場を訪れて得た「三つの違和感」

投稿日2014/03/11

福島第一原発汚染水問題の本質を見誤るな:現場を訪れて得た「三つの違和感」


東日本大震災からまる3年の3月6日、東京電力(東電)福島第一原子力発電所(福島第一原発)を訪問しました。原発関係者以外でここに来られるのは、政治家、役人、大手マスコミにほぼ限られていました。ところが、「今までと違う角度で現状を世の中に伝えて欲しい」という東電の希望にヤフーが応える形で、上記三分類に入らない我々が原発の敷地内に入ることができたのです。

緊迫感が強い原発敷地周辺

福島原発周辺には宿泊場所がなく、約50km離れたいわき市内のホテルに前泊しました。当日の早朝、まず東電福島復興本社がある双葉郡楢葉町の『Jビレッジ』に向かいました。ここはサッカーのナショナルトレーニングセンターですが、震災以来、原発作業員の基地になっています。ホールボディカウンター(WBC)で内部被曝状況を測定された我々は、復興本社代表である石崎芳行副社長らとともに、東電のバスで20km離れた福島第一原発に向かいました。

Jビレッジ周辺の住民生活は普通とほぼ変わらないのですが、富岡町の検問を過ぎたあたりから徐々に放射線量が上がり始め、慣れない私は緊張を強いられます。約40分バスに揺られ、厳重に警護されたゲートを超えて、ついに福島第一原発の敷地内に入りました。


全体的にコントロールされている原発敷地内


ゲート横の入退域管理棟に通された後、細かい手順説明を受けて、防護服、防護マスクを身に付けます。防護マスクは視界が悪く、頭部を結構強く圧迫されます。また、防護服は保温性が高く、外気温10℃未満で下にシャツを1枚着ただけなのに汗ばむほどです。冬と違って真夏や雨の作業がいかに苛酷か実際に着用すると想像がつきました。

我々は東電職員の案内を受けながら、『多核種除去設備』(ALPS)、汚染水タンクの溶接現場、4号機の使用済み燃料取り出し現場、1号機・2号機の中央制御室内部を順番に見て回りました。全体としては、まだ爆発の爪痕が残りながら、施設の補強・修復はかなり進み、冷温停止状態をコントロールしているという印象です。

ところで、視察中、マスコミ報道と比較した大きな「違和感」が拭えませんでした。それは「規模の違和感」「出口の違和感」「管理の違和感」という三つの違和感です。

「規模の違和感」:40万トン対100トン

規模の違和感とは、汚染水タンクの数・規模があまりにも圧倒的なことと関係しています。現在、約1,000基のタンクがあり、42万トンの汚染水が貯蔵されています。ところが、タンクの合計容量は45万トンしかありません。綱渡りなのです。2月にタンクから約100トンの汚染水漏れが起きて大問題になりました。これはフランジ接合タンクという漏れやすい構造を使っていたことが原因です。確かにこれは問題ですが、本質的な問題は、たかが100トンの水漏れではなく40万トンの膨大な水をどう管理するかです。これが規模の違和感の内容です。

汚染水は毎日確実に増えています。地下水と建屋の遮蔽、水の汲み上げなどにより、汚染水の発生量自体を減らす努力がされていますが、現実には毎日400トンの汚染水が新たに発生します。対策として、タンク容量を2016年に80万トンまで増やす計画が発表されました。しかし、現状の容量プラス35万トンなので、汚染水875日分にしかなりません。2年後に80万トンまで増やした瞬間にタンクはほぼ満杯になる計算です。もし、工事が遅れたり、余震によってタンクに亀裂が起きたりしたらどうなるか?そら恐ろしいことです。

今、本気で議論するべきことは、汚染水を貯め続ける方法ではなく、「いかに海に汚染水を捨てる状況を作るか」です。東電によると、ALPSなどを使えば、殆どの汚染物質を除去できるのですが、トリチウムだけは現状の技術では除去できません。したがって、世界中からトリチウム除去技術を集めている最中です。

除去に成功しても、汚染されていた水を海に捨てるには地元や世論の理解など様々なハードルを越えなければなりません。しかし、時間は待ってくれず、すぐに真剣な議論をしなければならないのです。

「出口の違和感」:港湾汚染モニタリングは第三者機関が行うべき


二番目の「出口の違和感」は汚染水の出口である海の汚染度についてです。汚染水は何故、タンクに入れて管理しているのか?この本質的な問いへの答えは、「汚染水が海に流れて、汚染が広がることを防ぐ」ことに他なりません。海の汚染度が低ければ、安倍首相が国際公約した “The situation is under control” が嘘でないことになります。

 現実はどうなのか?原子炉建屋の取水口前面では、ある程度、セシウム、全ベータ、トリチウムが検出されていますが、そこから離れた港湾内の濃度は検出限界値未満になっています。つまり、安倍首相は嘘を言っていないことになります。

 問題は、この数字が東電によって検出・発表されていることです。東電ホームページのトップでは、これらの数字が毎日更新されています。国際的にも極めて注目度が高い数字ですが、当時者の東電が発表している数字は信頼されず、日本政府が測定しても事態は同様でしょう。疑念を払拭するには、国際的な第三者機関によるモニタリングを受け入れざるを得ません。これは、福島の風評被害を防ぐ効果的な方策でもあります。

「管理の違和感」:元請け企業の社会的責任


 最後の「管理の違和感」は1日4,000人も出入りする原発作業員の管理の問題です。先程述べたように原発作業員の仕事は苛酷です。そもそも快適さを期待できる仕事ではないので、コストをかけて作業環境を改善するには限度があります。しかし、環境改善をしないとヒューマンエラーから大事故につながります。東電は食事、休憩場所、宿舎などの改善をすすめていますが、この管理の問題にも違和感が拭えません。

 何故なら、4,000人の作業員は東電の社員ではないからです。大半がゼネコンや重電メーカーなどの元請け企業から発注を受けている下請け企業の作業員たちです。つまり、東電が作業員のモラルを管理し難い構造になっているのです。大元の業務発注者は東電なので、東電と元請け企業との間で、作業員管理の情報交換は頻繁に行っているようです。しかし、これは元請けの管理体制に不安があることの裏返しでもあります。ここでは法的責任だけでなく、元請けの社会的責任が強く追及されるべきでしょう。

 福島原発を後にしたバスの車中で、石崎副社長の「この地域を除染、廃炉の研究拠点にしたい。福島出身で使命感を持っている社員も多いので、誇りを持てる環境を作りたい。」というセリフが印象的でした。先はまだまだ長いが、多数の英知と努力によって、この地域はコントロール下におかなければならないことを実感した一日でした。

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