「不用品シェア」文化作りで世界に貢献する: 株式会社トレジャー・ファクトリー野坂英吾社長(3)

投稿日2013/10/06

>「不用品シェア」文化作りで世界に貢献する: 株式会社トレジャー・ファクトリー野坂英吾社長(3)


 リユースショップをチェーン展開する株式会社トレジャー・ファクトリーの野坂英吾社長インタビューの三回目です。前回、企業文化を形成するために、規模が小さい時から新卒社員を積極的に採用したという話をお聞きしました。また、リユースショップに売りたい人が多い商品と、ショップから買いたい人が多い商品は必ずしも一致せず、均衡価格・数量の見極めが難しいとのことです。今回は、リアル店舗とネットビジネスの融合、他業界との提携、海外での事業展開の可能性についてお聞きします。

リアル店舗の強さを生かして、ネット上でも優位に

尾崎: 御社はネットビジネスを創業後早い時期から始められています。最初のサイトは「うるハピ」ですか?うるハピは、全国のリサイクルショップを検索でき、口コミ情報も集約しているサイトですね。

野坂: 総合店向けの自社サイトのほうが早くから始めていました。中古・リサイクル品の店舗情報をお知らせするサイトで、1997年くらいから自社のHPで告知していました。

尾崎: これは自社商品を売るイーコマースではなく、中古・リサイクル品の情報サイトとして使ってもらうことが目的ですね。御社はイーコマースにはあまり力を入れて来なかったのですか?

野坂: 今はイーコマースにも力を入れており、買い取りはインターネットを通して行うケースが増えています。「宅配買取」は、お客様がネット申し込み後、ダンボールで商品を送っていただき、当社から査定結果をメール送信し、成約したら買取代金を振り込む仕組みです。今、非常に伸びています。また、服飾アイテムは自社サイトのイーコマースで販売しています。

尾崎: 現在もイーコマースよりリアル店舗の売上の方が多いんでしょうか?

野坂: そうですね。ただ、ネットで商品を見てリアル店舗に来られる方も含まれていますので、徐々にネットの比重が増えています。

尾崎: イーコマース企業全般を見ると、リアル店舗を持たずインターネットだけで商売している企業が大半です。この点、御社のようにリアル店舗を持っている場合は、その強みがあると思います。御社はリユース品を売っているので、消費者に実物を確認してもらえるリアル店舗が必要なのでしょうか?

野坂: リアル店舗の強みはあると思います。その強みを活かすことによってネット上でも優位性が出ると思っています。

尾崎: 特にリアルな店舗が必要な商品にはどのようなものがありますか?

野坂: 冷蔵庫、洗濯機の場合、リアル店舗の強みが生きます。商品を選ぶだけならネットでもできますが、商品が大型なのでご自宅に届ける距離の壁があるんですね。大型商品は近所のお店から買った方が送料を抑えられるので、リアル店舗のメリットがあります。また、洋服もネットだけで買えますが、試着してサイズや自分に似合うかどうかを確認したい場合はリアル店舗が必要です。リユース品は一商品あたりの品数が少ない一品物の集まりなので、もともと「この商品が欲しい」と決まっている場合はネットだけで十分ですが、欲しい物が決まらずウィンドウショッピングをしたい場合は、リアル店舗に行きたくなります。

 野坂さんの会社は自社店舗での商品販売に加えて、引越し、宅配、ネット衣料品販売、リースなど様々な業界との提携を加速させています。各提携の意図、今後はどのような方向に裾野を広げて行くのかお聞きしました。

異業種との提携は仕入ルート拡大の効果をもたらす

野坂: 引越し業界との提携の主な目的は、仕入れルートを新規開拓することです。いかに良いリユース品を調達するかがこのビジネスの要です。物を売るための工夫以上に、仕入れには工夫が必要です。この点、引越し業界との提携は効果的です。引越しする場合、必ず不用品が出ますので、捨てずに当社に売ってもらえるからです。
 引越し以外に、マンション管理会社との提携も増えています。マンションのイベントとして「何月何日当社が買い取りに行きます」と告知し、事前に申し込みをいただきます。多いケースでは一度に50件の申し込みをいただいて、ひたすら個別訪問をして買い取ります。このやり方の良さは、1品しか売りたい品がないお客様にも出張買取に伺える点です。通常、ある程度の点数がないと出張コストの方が高くつくので、出張買取はできません。しかし、マンションで一斉に申し込んでいただければ、出張コストを気にせず、少ない点数のお客様からも出張買取ができます。
 また、宅配会社とも補完関係を築いています。多くの企業で不用品が定期的に発生します。例えば、マンション会社であれば、販売後にはモデルルームで使った家具が要らなくなります。また、ホテルやオフィスの模様替えがあれば、不用品が発生します。宅配会社はそういう情報を沢山持っているので、声をかけていただいています。

尾崎: どんな会社でも定期的に不用品の山が出来ますからね。規模が大きい会社は量がすごいと思いますが、まだ使えるのに捨てているものも多いですよね。

野坂: 不用品は捨てるものだと思っている企業は、当社のサービスを知ってさえいただければ、お互いWin-Winになれます。今後も、不要だが価値がある物を買い取り、欲しい人につなぐ取り組みを拡大します。

 最近、法人が使用しているパソコン(PC)市場が大きく変化しています。現在、マイクロソフト(MS)社製のソフト「Windows XP」(XP)を使っている法人が多いのですが、XPはかなり旧世代の製品になってしまいました。MSがXPのサポートサービスを止めるので、顧客法人は新しいソフトに切り替えなければなりません。この際、ソフトと一緒にハードも入れ換える企業が少なくありませんが、旧型ハードも部品を換えれば結構高いスペックの中古PCに生まれ変わります。リユース業界にとっても大きなビジネスチャンスになるはずです。

必要な物は使い、不必要な物はシェアすることで文化作りの接点を目指す

尾崎: 他に、衣料品ネット販売企業との提携はどう考えれば良いですか?競合会社との提携になるように思いますが。

野坂: マガシーク社など、ネットの衣料品販売サイトとの提携もうまく行っています。買い物をする人の家のクローゼットが一杯だと、追加の買い物ができなくなります。そこで、クローゼットの中からあまり着ていないものを我々が買い取れば、ユーザーの方は新品を買いやすくなるわけです。当社が買取った時にポイントを付与して、そのポイントを使ってマガシーク社で買い物ができる仕組みを作りました。我々は新しい仕入れルートを開拓し、先方は売上が増え、お客様は新たな商品を購入することができるというわけです。

尾崎: 加えて、最近ドレスレンタル事業を始めましたね。今までの御社ビジネスと少し違うと思いますが、どのような意図がありますか?

野坂: ドレスレンタル事業を手掛けて、「シェアビジネス」を始めようという意図があります。ただ、当社のリユース事業も「時系列のシェア」ですし、レンタルによるシェアも今後のライフスタイルに必要不可欠なので、当社の事業にマッチしています。そういった発想からレンタルの市場調査をするうちに、ブランドバッグのレンタル企業、カリルを買収しました。買収後に元の事業モデルに修正を加えて、ドレスのレンタルを始めました。

尾崎:時間軸を変えればリユースもレンタルも同じところを目指しているわけですね。そう考えると、現在、両者は別物ですが、将来的に同じ市場に集約されるかもしれません。

野坂: 両者は近づいていく可能性があります。リアル店舗でもドレスを販売していますが、ドレスは普段着ではないので、買わずに結婚式などに合わせて借りるニーズが強いです。この場合は、カリルのレンタルサービスに生かしています。

尾崎: ドレスはレンタルに合っていますね。高価な着物やドレスは、買わずに借りたい人が多いですから。ただ、持ち主は自分のドレスを汚されては困るから、積極的には貸さないでしょうね。この点、御社がドレスのレンタルサービスを行うのであれば、うまく回りそうです。

野坂: 今後目指したい姿は、眠っているアイテムのうち必要なものは使い、使わないものはリユース・レンタルする文化作りの接点となることです。そのために、多くの企業と提携しながら、世の中に眠っている物を活性化して行きたい、そうすれば、世の中がもっと良くなるんじゃないかと考えています。

 リユースショップの原型は「家庭で余っているもの」を販売することです。ところが、一度に大量の不用品が出るという意味では、法人市場は個人市場以上に魅力的です。法人から出てくる不用品は原価償却が終わっているので、廃棄しても損失はなく、「タダで捨てるのが当たり前」になっています。ところが、法人不用品の流通市場が出来れば、企業にとって新たに利益を得る機会になります。また、シェアの市場は無限の可能性を秘めています。現状では、カーシェアリング以外に目立った市場はありませんが、ドレスを含めて今まで思ってもみなかったビジネスモデルが作られることが期待されます。

日本のリユースショップのモデルを世界に広げるのが中長期的目標である

尾崎: 米国など海外にもリサイクルショップはあると思いますが、日本とどういった違いがありますか?

野坂: 綺麗な商品でないと売れないという意味では、日本の消費者ニーズは相当厳しいです。したがって、我々はかなり鍛えられています。また、リユース品にありがちな「我々は品質保証をしません」という販売が多い点も日本と違います。

尾崎: 米国ではガレージセールが盛んですね。自宅の軒先や近所の公園で不用品を売りに出し、近所の人だけでなく、顔を見たこともない人まで平気で買って行きます。埃をかぶっていても余り気にせず、品数が多くて値段が安ければ良いという考え方です。したがって、米国人は綺麗で保証が付いたリユース品にあまり価値を見出さないかもしれません。

野坂: 現在、米国は確かにガレージセールが盛んですが、いずれ当社のようなお店ができてきて、米国の文化も変わっていくと感じています。

尾崎:イーベイやヤフーオークションが急成長して、リユース品をどんどん売るという世の中になれば、リユース品店舗は要らないということになりませんか?米国では、リユース品を積極的にオークションに出す人が多いですが、日本人は比較的出し渋るという違いがあると思います。

野坂: 米国でリユース品のネット販売が成長しているのは、ガレージセールで売る・買うという文化が広く定着しているからだと思います。米国人にとっては、ガレージセールもネットも単なる売買ツールの違いなので、イーベイが成長するんだと思います。
 米国にも当社のようなお店はありますが、主に寄付で成り立っています。企業の寄付で物が集まりました、それを売っていますというNPOみたいなモデルですね。そういった経営母体が結構多くて、ビジネスとして成り立っている所は少ないと思います。寄付が前提となるので消費者ニーズに合った品揃えができず、ただ安いことがセールスポイントになります。私は日本のリユースショップが世界で一番進んでいると思うので、このモデルを世界に広げるのが中長期的な目標です。米国のようにガレージセールが浸透している社会でも、当社のようなお店の良さを理解してくるユーザーは大勢いると思うのです。

尾崎: 欧州やアジアでも、ガレージセールは浸透しているのでしょうか?

野坂: どこの国にもリユースショップはあります。ただ、小規模なところが多く、アジアの途上国では、店なのか店じゃないのか分からないような店舗が多いです。その状態からチェーン店に移行するには地域特性に合わせた仕組みを深く考えなければなりません。

尾崎: どの地域が成長していますか?

野坂: 欧州、豪州、アジアで各国数店舗ずつ展開している企業もあります。これからは世界で通用する店を中心に淘汰が進むと思われるので、是非名乗りを上げられるようにしたいと考えています。

 以前、総合ディスカウントストアのドン・キホーテを調査したことがあります。同社はコンビニや家電量販店のような整然かつ合理的な商品陳列を行わず、まるで倉庫に雑然と物を積み上げたような陳列をしています。同社はこのやり方を「圧縮陳列」と呼んでいますが、まるで宝探しをするような「ワクワク感」があり、これがリピーターを増やしているようです。トレジャーファクトリーの店名は日本語で「宝物の工場」ですから、ここで宝探しをしたいお客さんは多いはずです。

リアル店舗は、全国的にみて相当な拡大余地がある

尾崎:最後に御社の今後の成長余力について伺いたいものです。

野坂: 当社の店舗のうち総合業態(服飾だけでなく多様な品物を売っている店舗)は宝探しの場所なので、ドン・キホーテ社に近いかもしれません。服飾専門業態は20店ありますが、商品の種類が限られているので、また違った宝探し感があります。

尾崎: ドン・キホーテは大企業になった(2013年6月期の売上5,684億円)ので、伸びシロは確実に減っています。そこで、新型店舗である「MEGAドン・キホーテ」を展開していますが、一見、イトーヨーカドーみたいな店構えなんですね。まるで「ドン・キホーテ」じゃありません。商品や店構えを規格統一するとドン・キホーテの良さがなくなる、しかし、規格統一しないと、これ以上の成長は難しい。「宝探し」の業態は会社が大規模化するとこのようなジレンマに直面しますが、どう思われますか?

野坂: その意味では限界を感じていないですね。当社が出店していない地域のリユース品をネット経由で全部買い取れるかというと、キッカケがないと売りに出してもらえません。リアル店舗が近所にあって、初めて売り物が増えるわけです。これがリアル店舗の強みです。当社の店舗は関東に集中していますが、今年5月、関西に初めて出店しました。関西だけで何十店も出店できそうなので、全国では相当な拡大余地があります。関西で好調なスタートを切れたところを見ると、根本的な地域差はないと思います。

 野坂さんは、顧客に不親切で非近代的だったリユース業界のイメージを変えてきました。現状は首都圏での成功を全国展開につなげようとしています。また、リアル店舗、ネット、業界を越えた提携など業務範囲の変更を模索しています。今後は、特定の商品分野への特化や、ハードオフ、ブックオフ、ゴルフパートナー、コメ兵といった他のリユース企業との提携による、「リユースのスーパーマーケット」を目指すことが選択肢に入ると思います。また、リアル、ネットの他業界と提携して全く新しい業態になっているかもしれません。野坂さんとはまた時間をおいてお話しをしたいものです。


野坂英吾(のさかえいご)/1972年生まれ 、神奈川県出身。大学4年生の時に起業を決意し、1995年、トレジャー・ファクトリーを創業。2007年、東証マザーズに上場

Copyright©2013 Hiroyuki Ozaki. All Rights Reserved.


コメントを残す

メールアドレスが公開されることはありません。 * が付いている欄は必須項目です

次のHTML タグと属性が使えます: <a href="" title=""> <abbr title=""> <acronym title=""> <b> <blockquote cite=""> <cite> <code> <del datetime=""> <em> <i> <q cite=""> <strike> <strong>

(Spamcheck Enabled)