「不用品シェア」文化作りで世界に貢献する: 株式会社トレジャー・ファクトリー野坂英吾社長(2)

投稿日2013/09/30

「不用品シェア」文化作りで世界に貢献する: 株式会社トレジャー・ファクトリー野坂英吾社長(2

尾崎 弘之 | 東京工科大学教授、経済学者
2013年9月30日 8時53分

トレジャー・ファクトリー野坂英吾社長
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学生起業家として、リユース商品の店舗チェーンを立ち上げたトレジャー・ファクトリーの野坂英吾社長の第二回インタビューです。前回お話ししたとおり、先輩ベンチャー経営者の体験談をただ聞くのではなく、それを自分の立場に応用する「変換力」を磨くことが成長のカギでした。成長には優秀な人材が欠かせませんが、彼は他のベンチャー企業と一味違う方法で人材集めや企業文化の形成を行ってきました。

理想の形は、新卒が中心となり中途採用組が融合し、企業文化を作ること
尾崎: 人材の集め方にはどんな工夫がありましたか?

野坂: 会社が出来たばかりの頃は、私自身をメディアで見て、「ここで働きたい」という人たちが集まってくれました。その次のタイミングからは人材募集をかけましたが、しっかりと採用経費をかけ、会社の目指す姿に共鳴する人を集めることにこだわりました。人材募集でも初期はメディアに助けられましたが、その効果が薄れた後の体制作りを考えたわけです。

尾崎: 御社は創業後、比較的小規模の時から新卒を採用されていますよね。ベンチャー企業は新卒を採用しても仕事を教える余裕がなく、どうしても即戦力の採用をしたくなります。御社が初めて新卒採用を行った時、社員は何人くらいでしたか?

野坂: そうですね、10人から20人の規模の時でした。ただ、新卒採用が早過ぎるという感覚はなかったです。

尾崎: それは社長自身が若くして創業したからということでしょうか?

野坂: というよりは、新卒にきてもらう意義を私なりに感じていたからです。企業が大きくなる上で「企業文化を作る」ことは重要だと思っていました。中途採用の人たちも企業文化形成に貢献してくれるんですが、どうしても前の会社での経験を引きずってしまいます。そういった意味で、新卒のまっさらな人たちが中心となり、中途採用組が融合して企業文化を作ることが理想でした。
単純に仕事の能力では中途採用組のほうが即戦力としては上かもしれませんが、人を育てることによる企業文化の形成が長期的には重要だと思っていたので、育成に時間がかかるのは気になりませんでした。これも「新卒に先行投資して基礎を作らないと後々苦しむ」という先人ベンチャー経営者たちの「知恵の変換」ですが、いつから新卒採用に力を入れるべきか自分なりに計算していました。

尾崎: 新卒採用の重要性は理解しても、経営者は余裕がなくてできないことが多いです。野坂さんの場合はいかがでしたか?

野坂: 多少の我慢はありました。ただ、ちょうどそのタイミングで、当社は新卒採用ができる環境になっていました。したがって、タイミングをずらさない方が良いと思いました。経営は右肩上がりでなくて波のように浮き沈みするので、波が盛り上がっている時に手を打っておかないと、沈み始めて次の手を打つのは難しいですよね。

尾崎: 御社の業務内容の特徴からいって、他社と比べて新卒を受け入れやすい状況だったということですね。

野坂: それもあったと思います。新卒を受け入れやすいかどうかより、「中途採用といっても前職の経験を生かしにくい」という表現が当たっています。当社は中古品リサイクル業界の昔ながらのやり方をガラリと変えて、新しい業界を作って来ました。多様な物の知識を身に付けないといけない特殊な仕事です。何かの業務経験があっても、なかなか高く評価できないんですね。このように、中途と新卒のスタートラインが大きく変わらないのであれば、多少コストがかかっても、新卒採用による基礎作りが生きて来ます。

リユース業界で重要なのは、「お客に商品を売る」ことより、中古品を持っている人から「良い商品を買い取る」ことです。良い商品が置いてあれば、お客さんは自然に買ってくれます。新品を取り扱う家電量販店業界では、近隣の店舗同士で激しい値段競争が起きますが、リユース商品の店舗は様相が異なります。顧客が品質と値段の組み合わせを良いと思えば、近隣店舗との値段競争など起きないものです。他店舗との差別化が難しい新品と違い、店の個性を出すことができるリユース品では、バイヤーの役割がより重要になります。

「トライ&エラー」、そして問題点をいかに修正するかが重要である
野坂: 社員には、店舗での接客以外にバイヤーの役割があるので、独自で一から教えていかざるを得ません。中途採用であることの経験をそれほど買えないわけですね。

尾崎: よくわかりました。即戦力を集めた方が早くテイクオフできる会社もあるでしょうけど、御社の業務特性に合わせた仕組みですね。前例がない業態なので、バイヤーによる品揃え、値付け、品質保証、POSシステム導入など大半が手探りだったと思います。過去のデータがないなかで、どのような経営上の仮説を立てましたか?

野坂: 「やったことのないことは仮説通りに行かない」と基本的に思っていますから、「トライ&エラー」に尽きます。トライ&エラーといっても「やりっぱなしで修正しない」企業もあるかもしれませんが、問題点をどう修正をするかが重要だと思います。以前、中古リサイクル店では殆どお目にかからなかったPOSシステムも、今は大半の企業が使っています。ただ、「POSシステム」とひとくくりに言っても、機能、使い方、役割が各社全然違います。それを有効活用していくためには、日々仕組みを変化させるしかありません。

尾崎: そういった仕組み作りにおいて、「これは誤算だった」という体験はありますか?

野坂: 致命的な誤算はなかったですね。ただ、商品管理は非常に難しいことをスタートして改めて感じました。

尾崎: コンビニは、本部が緻密な商品管理を行うためにPOSシステムを使っていますが、御社はコンビニのように完璧な計画を立ててもうまく行きませんよね。バイヤーの仕入れによって商品がばらつくでしょうし、過去に例がない商品を仕入れると、商品カテゴリーを変更しなければなりません。

野坂: そこで、出来合いのPOSシステムを使うのではなく、一から自分たちで商品概念を決めるところから始めました。システムの初期設定から商品の考え方を固めていかなければ混乱するので、確かに苦労しました。
商品管理は奥が深いですね。POSによる管理を始めて、思いのほか商品の回転が早い(商品が在庫として残らず、短期間で売れる状態)ことが分かりました。回転が早いのは売る方にとっては良いことなんですが、「回転が早いからキチンと商品化できない」という別の問題が起きます。バイヤーが買取った後、汚れがついたまま売らざるを得ない、値札がつく前に売らざるを得ないといった問題です。いろいろな店舗を見て回ると、「何故こんなに汚い物を売っているんだろう」「何故値札も付けずに売っているんだろう」と思うことがありましたが、商品の回転が早すぎて、買い取った状態のままほしいというお客様がいらっしゃったということです。
それに慣れると、他の商品化も「こんなもんでいいや」となり、汚いお店になりかねません。この問題には、商品の回転が早いという前提でPOSシステムを変えて対応しましたが、それも一筋縄ではいきませんでした。一部の回転が早い商品にシステムを合わせると、他の商品は「回転が遅い」と認識され、新たな混乱を生むからです。そういった問題を踏まえ、「トータルで商品の回転を適正に保つ」ようにPOSシステムを改善しました。同時に、商品の売り方、商品化の方法も変えました。

尾崎: 回転が早い商品とは例えば、どのようなものがありますか?商品カテゴリーに関係なく、品質と値段に「お得感」があれば回転が早くなるんでしょうか?

野坂: カテゴリー毎に特徴があります。例えば家具は回転が早いですね。家具はスペースを取るので、価格設定を割安にして、回転を上げる必要があるからです。値段を究極に安くすれば買い手はすぐ現れますが、バイヤーも安く仕入れなければならず、今度は品揃えが追い付きません。安いという理由で売れるのは良いのですが、仕入れが間に合わない「商品の逆回転」が起きるのです。したがって、売りと買いの均衡点の価格をどう見極めるか、奥が深いビジネスだと思いました。

尾崎: かなり試行錯誤が続いたようですね。

野坂: 分からないことが多いので、一通りあらゆるものを売ってみました。商品毎の売れ方、特性を大体掴んで、それを需要変化に合わせるという感じでしたね。今、人々はどんなものを売りたいのか、また、リサイクル品としてどんな物を買いたいのかを理解し、うまくマッチングさせなければなりません。

リユース業界に限らず総ての小売店舗は、売上予測と仕入をうまくマッチさせることが重要です。これに失敗すると、大量の在庫を抱えるか、買いたいお客は大勢いるのに欠品が続く事態になります。どんな小売業界にとっても売上予測は難しいものですが、トレジャー・ファクトリーは、スーパー、家電量販店などと異なった独自の売上予測ノウハウを作り上げています。このノウハウが同社の強みであり、他社にとって参入障壁になっています。

店舗情報は現場情報とつなぎあわせて生かす
尾崎: 顧客ニーズの変化の読み方については、どういった工夫があるのでしょうか?

野坂: ひとつは世の中で売れている「流行のキーワード」をつかむことです。欲しい人が世の中に多い商品は、それを持っている人も多いはずですし、持っている人が多いということは、それが売りに出る可能性も高くなります。もう1つ、世間ではどんなものが家の中に眠っているかを知ることが大事です。世間の家の物置にしまっているもののうち何が不要かを知り、それらを買いたいニーズとつなぎ合わせなければなりません。

尾崎: こういった情報は街を歩いて拾って来るのですか?

野坂: 情報収集のきっかけになるのは、店舗に何か変わった売り物が持ち込まれる時です。その場合、「今までそんな商品は扱っていなかったから売らない」ではなく、チャンレンジすることにしています。我々のビジネスの良いところは、「売り」と「買い」の2回、顧客との接点があることです。接点が多いので、人のリアルタイムの動きが分かります。「売り手はこういうシチュエーションでこういったものが不要になるんだな」、「買い手はこういう動機で物が欲しくなるんだな」といった情報を肌身で感じることができます。
例えば、大量のアイドルのCDや、一時期流行した厚底の女性靴などを持ち込む人がいれば、今はこういうものが不要なんだと分かります。一方、流行との兼ね合いがあるので、大量に持ち込まれたものが必ずしも売れるとは限りません。きちんと買い手の状況も理解しておかないと不良在庫を抱えます。POSシステムで売れ行きを掴みながら、「こういうものは売れていないから買取りを減らして、違うものに移していこう」という判断をしています。

尾崎: なるほど。野坂さんは街を歩き回って情報を集める必要もなく、それを越える情報が店舗に集まる仕組みになっているわけですね。

野坂: その上で現場のバイヤーたちは相当リサーチしています。店舗の情報はあくまで断片的なので、つなぎ合わせる現場情報がないと店舗情報を活かしきれません。

尾崎: 教育すれば、誰でもそれなりのレベルのバイヤーになれるのでしょうか?本人の性格などが関係しますか?

野坂: 当社には一定レベルのバイヤーになるまで育てる仕組みがあります。極端に言えば、誰でもそのレベルまでは行けると思いますが、そこからの上積みは個々の努力やセンスによるでしょうね。

尾崎: その仕組みを作られたところが、御社の強みですね。

野坂: そうです。そういう仕組みがないと、すごく伸びる人もいれば全くダメな人もいるという状況になります。それでは困ります。

尾崎: バイヤー個々の努力に期待するのではなく、一定レベルを維持する仕組み作りを考えることが大事です。ただ、仕組み作りには時間やコストがかかるので、競合他社が新規参入する場合の参入障壁になりますね。

リユースの商品管理の話は面白く、大いに引き込まれました。ノウハウを言葉にして説明するだけでなく、データベース化して、社員全員が簡単に参照できること、日々新しい情報が追加されることが、このような仕組みでは重要でしょう。次回は、海外のリユース事業の状況と、今後トレジャー・ファクトリーが成長を続けるうえでの戦略についてお聞きします。


トレジャーファクトリー・スタイルの店内
野坂英吾(のさかえいご)/1972年生まれ 、神奈川県出身。大学4年生の時に起業を決意し、1995年、トレジャー・ファクトリーを創業。2007年、東証マザーズに上場

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