「不用品シェア」文化作りで世界に貢献する: 株式会社トレジャー・ファクトリー野坂英吾社長(1)

投稿日2013/09/26

不用品シェア」文化作りで世界に貢献する: 株式会社トレジャー・ファクトリー野坂英吾社長(1

 関東を中心に「トレジャーファクトリー」という看板を掲げたリサイクル・リユース品の店舗チェーンがあります。電化製品、家具、贈答品、雑貨、ブランド品、洋服、スポーツ用品、ゲーム機器、貴金属まで様々な商品が並んでいます。昔ながらの「リサイクルショップ」といえば安さだけが取り柄で、埃をかぶった半端品を売っているというイメージがありますが、ここは近代的な店舗管理を導入して、過去5年間で売上が2倍以上になる急成長をしています。
 2013年7月、店舗チェーンを運営する株式会社トレジャー・ファクトリーの野坂英吾社長と東京都足立区の本社でお会いしました。野坂さんは現在41歳ですが、学生時代に起業してマスコミの注目を浴びた時期があります。その頃と若さは変わりません。

「ピンチこそチャンス」と捉え、業務のスピードアップを徹底した

尾崎: 野坂さんが起業されたのが1995年。前回お会いしたのがIPOした直後の2008年でした。5年振りに業績を拝見すると、売り上げ、利益ともに着実に伸びていますね。

野坂: そうですね。おかげさまで、上場したあとも増収増益を続けることができています。

尾崎: 店舗数など規模を拡大しても売り上げが連動しない企業がありますが、そういった悩みはありませんでしたか?

野坂: 上場前はそういった壁もありましたが、問題をクリアしてから上場したので比較的順調にいっています。一番大きな壁は上場する3~4年前でしたが、それが会社のターニングポイントでした。

尾崎: 2004年の1年間で6店舗増やした時のことですか?この時期、「店舗数の拡大に人材育成が追いつかなかった」とおっしゃっていましたが、どのようにこの問題を克服されたのでしょうか?

野坂: まず、問題が起きた背景をじっくりと考えました。ひとつには、社長の自分が店舗で陣頭指揮をとっていたため、会社全体を俯瞰することができなくなっていました。また、自分では出店に合わせて人材育成を行ったつもりが、社員の仕事ぶりの変化に気付かなくなっていました。人材の質を数値化することが困難なことが原因でした。
 対策として打ったことは2点です。ひとつめに、「ピンチはチャンス」と捉え、この困難な時期に企業としての課題を一気に解決しようと考えました。具体的には情報共有のやり方をガラッと変え、クローズドな情報管理からオープンな情報管理にしました。ふたつめは情報共有のスピードアップの徹底です。例えば、1ヶ月かかってまとまっていた情報をリアルタイムで把握できるように変えました。
 これらの変更において重要なことは利益管理の方法でした。それまで、販売管理費(販管費)は大きなブレがなかったので、各店舗とも売上総利益(粗利)を特に意識して管理していました。しかし、粗利ばかりを意識していると、現場は利益増の方法を深く考えないようになります。そこで、各店長は徹底して営業利益(粗利-販管費)を意識するよう指示しました。

尾崎: その頃社員は何人くらいでした?

野坂: 100人前後だったと思います。

尾崎: 社内情報共有は社員数十名の規模であれば何とか回りますが、100人規模になると途端に難しくなります。情報共有と言えばIT化を指す企業が多いですが、それ以外に何を変えましたか?

野坂: 当社の場合、組織の階層を増やしました。組織の階層を増やすと、現場で売上・利益を生まない人が多く出るので、それまでは、営業部長1人で全14店舗を統括するフラットな組織にしていました。しかし、それが社内の情報共有スピードを逆に遅くし、ある店舗で良い事例があっても、それを全店舗ですぐには共有できなくなっていました。

 フラットな組織の本来の良さは、「専務、常務、平取、部長、副部長、次長、課長、主任」といった沢山の階層を作らないため社内の情報共有スピードが早くなることです。ところが、極端にフラットな組織になると、少数のマネージャーに情報と権限が集中し過ぎて、情報伝達と意思決定が遅くなります。この問題には、新たな階層を作り、「フラット度合い」を緩めて対応しなければなりません。このように、組織がフラットかピラミッド型かという問題はあくまで相対論であり、どちらかが絶対に正しいというものではありません。企業規模が大きくなると組織の最適な形も変化するので、世界中の企業が試行錯誤を繰り返しているのが現状です。

情報の共有の仕方次第で組織は変わる!

野坂: そこで、当社が理想と思っていたフラットな組織が、情報共有の面でうまく機能しなくなったので、そのタイミングで、営業部長の下にエリアマネージャーをつけることにしました。最初は2人でしたが、3人、4人と増やしていきました。この変更はとても効果があり、社内の風通しが良くなりました。
 営業部長はそのまま同じ者にやってもらいつつ、特に優秀な「スーパー店長」を昇格させてエリアマネージャーに据え、8店舗ぐらいを統括させました。その当時は14店舗でしたので、エリアマネージャー2人体制に変えたのです。

尾崎: 社長が「こうしなきゃいけない」と言っても、社員の意識変化がついてこないという苦労はありませんでしたか?

野坂: いえ、むしろ逆でしたね。いきなりそのタイミングで「会社が危機的状況だ」とオープンにしたからです。そうすることによって社内に危機意識が芽生え、「自ら変わろう」という雰囲気になりました。社員が私の危機感を理解してくれないという悩みはなく、むしろ結束力が高まり一体感が出てきました。情報の共有の仕方次第で組織は変わるものだと感じましたね。

尾崎: 危機的な情報を社内でオープンにすれば必ず成功するわけではなく、むしろ人心が離反するケースも少なくありません。御社の場合、もともと一体感があったからうまく行ったのでしょうね。

野坂: そうですね、元々社内のコミュニケーションは良かったと思います。ちょうどその頃、上場準備のため内部管理体制を作り始めた時期でしたが、理想的なコミュニケーション体制とは言えませんでした。そこをきちんと修正したことによって、組織がもう一段強くなったと思います。それが上場してから業績を伸ばすことができた大きな要因でした。

野坂さんは危機感にかられて対処療法に走るのでなく、時間をかけて理想と現状とのギャップを埋める努力をされたわけです。特効薬を求めて事態を悪化させるケースがありますが、「膿を出し切る」ことが重要だとお話を聞いて痛感しました。

野坂さんのように若いときに起業したいと思っている人は大勢いますが、ほぼ全員が起業後早い段階で挫折のピンチを迎えます。野坂さんも例外でなく、起業準備を一緒にやっていた学生時代の友人が会社を作る前に離れていったそうですが、精神的にキツかったと思います。起業で成功するには、このような壁を乗り越えるのがカギだと考えます。

起業では「あれっ?」と思われるエッセンスが大事である

野坂: 確かに、早い段階から乗り越えなければならない壁に当たりましたが、私の場合、良くも悪くも「途中でやめられない状況」を作ったことで克服できたと思います。学生時代に色々な起業家の講演を聞いた中で、「いかに退路を断つか」が大事だと感じましたので、その点にこだわりました。したがって、就職活動をして内定をもらって、その内定を残しながら起業の準備をするのでは、まず無理だと思います。就活はやめ、「もう進むしかない」という状況に自分を追い込んだので起業できたと思います。

尾崎: 他にどんな退路の断ち方をしましたか?

野坂: 「自分は起業する」と何度も公言することでした。起業する前にテレビから3件、雑誌から10件ぐらいの取材を受けて、引くに引けなくなっていました。

尾崎: 会社を作る前からマスコミに取り上げられたんですね。今では学生起業家も珍しくないですから、よっぽどユニークな事業でないと取り上げてもらえません。当時は野坂さんのような存在は珍しかったですからね。

野坂: そうです。「会社を作ろうとしている学生がいる」と取り上げてもらっても、会社を作る義務は生じませんが、「公共の電波で『会社を作る』と宣言したからにはなんとかしなければ」と思っていました。

尾崎: 単なる学生起業家というだけではなく、何か情報発信で工夫をされたと思います。そうでなければ、なかなかマスコミは興味を示しませんから。

野坂: そういった意味では、「珍しいことをする」ということでしょうか。これは「何かちょっと変わっている」と思われるメッセージを世の中に発することによって、関心を持ってもらえます。何か「あれっ?」と思われるエッセンスが起業では大事だと思います。潤沢な資金、万全なバックアップ体制、人材全てが揃っていれば必要ないでしょうけど、ベンチャーは何も持っていないわけですからね。

尾崎: 野坂さんの場合の「あれっ?」はどのようなものでしたか?

野坂: 1995年当時はバブル崩壊後経済に閉塞感が出始めていた時期でしたが、マスコミは「第3次ベンチャーブーム」に相応しいユニークなベンチャーを探していました。幸運にも「学生起業家」ということで、「あれっ?」と思ってもらえたんです。そして、環境問題がクローズアップされ始めた時期だったということも追い風になりました。ただ、これは一過性のものなので、頼れるのはスタートダッシュの時だけでした。スペースシャトルに例えると、1段ロケットと2段ロケットが切り離されて、いよいよシャトル本体だけになった時に、ちゃんと軌道に乗せられるかが次の課題でした。ただ、軌道に乗るまでの推進力としてマスコミなどに助けてもらえる打ち出しをすることが大事だと思います。

「先人から学ぶ」ことで、センスと「変換力」を生かす

尾崎: 軌道に乗る前に爆発したり墜落したりする人が殆どですからね。色を出す以外にどのような工夫をされましたか。

野坂: 起業するにあたって、「先人から学ぶ」ことを重要視しました。既に豊富な経験がある起業家は別かもしれませんが、学生には情報も経験も何もかも不足しています。したがって、先人の経営者たちが歩んだ道のりと失敗体験をたくさん聞くことと、それを自らにおきかえる「変換力」が重要だと思います。単に先人の失敗談を聞くのではなく、それらが「自分の身に起きたらどうなるか」という変換をする力です。

尾崎: 「そんな失敗をしたんですか」とただ聞くのではなく、自分の身にどのような形でトラブルが来るか、事前に想像する力ということですね。これができれば、いざトラブルが起きても、慌てずにすみます。

野坂: ただ、ケーススタディで聞いたことを、自分の未来に応用、変換して我がものとして捉えるのは難易度が高いと思います。しかし、これができないと、規格に合わないロケットを付けて空中爆発するかもしれません。この辺はセンスの問題でしょうけど、それは先天的な素質というより、あとから学ぶことができます。
 私の場合、学生のうちからベンチャー起業家30名から話を聞けました。もちろん本も読みましたけど、本に書いてある内容には限りがありますので、30名の方からの直接の話が自分の変換する幅を広げました。また、大学2年のときに1年間、インターンシップのような形でベンチャー企業に出入りして、学んだ経験が大きかったです。

尾崎: センスと変換力を効かせて「これはうまくいった」という体験にどのようなものがありますか?

野坂: 店舗の出し方がまさにそうでした。初めて出した店舗の広さを150坪にしましたが、2店舗目は同じ広さにせず、敢えて50坪にしました。150坪の店がなんとか回っていましたから、同等かそれ以上の規模の店を出しても良いはずですけど、色々な経営者から「複数店のオペレーションは1店舗の運営と比較して相当難易度が高い」ということを聞いていました。したがって、2店舗目は小さくして「複数店のオペレーション方法」を学び、それをマニュアル化したんです。すぐに2店舗に増やすと欲張るのではなく「1.5店舗」にとどめたため、うまく行ったと思います。「いきなり複数店舗を全力プレーで運営すると、基礎的な対応がおろそかになる」という先人の教えが生きました。
 そして3店舗目で勝負して一気に340坪の大型店を作りました。3店舗目は逆に大きくして、仕入れの回し方の新しいマニュアルを作りました。こういう要領で店舗運営できたので、4店舗目以降は大丈夫という自信になったんですね。実際の出店をどんなステップで立ち上げていくかという詳細な組み立ては、先人からの学びを形にしたものでした。
 資金集めの対応も同様でした。創業1年目から色々なメディアに取り上げてもらったおかげで、まだよちよち歩きにもかかわらず、ベンチャーキャピタル(VC)が連絡をくれました。ただ、そこで舞い上がらず、VCへの接し方、事業計画・資金計画の立て方は先人の教えを参考に組み立てました。

 学生起業家として注目されるプレッシャーをはねのけ、事業を軌道に乗せるためには、「先人の教えを変換することが効果的だった」という話をお聞きしました。野坂さんが参考にした先人の教えは「失敗例」が多かったようです。時期が変われば経営環境も変わるので、先人の成功例をなぞっても殆どうまく行きません。ただ、失敗例には再現性があるため、先人の失敗を学べば、その轍を踏まずに済み成功に行きつくチャンスが増えます。また、先人の失敗例をよく分析して、自分の立場に合わせる変換力の大事さも納得できます。次回は、企業文化の形成の仕方、商品管理の奥深さについてお聞きします。

野坂英吾(のさかえいご)/1972年生まれ 、神奈川県出身。大学4年生の時に起業を決意し、1995年、トレジャー・ファクトリーを創業。2007年、東証マザーズに上場

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