NPB加藤コミッショナーは辞めなくても良い: 所詮ガバナンスが機能していない組織は変わらない

投稿日2013/06/25

NPB加藤コミッショナーは辞めなくても良い: 所詮ガバナンスが機能していない組織は変わらない

実は統一球「反発係数」のルール変更はなかった

日本プロ野球機構(NPB)を大混乱に陥らせた「統一球問題」が新たな展開を迎えました。「昨年より飛ぶボールに変えたことを事務局から知らされていなかった」と6月11日の記者会見で憮然とした表情を見せていた加藤良三コミッショナー(71)が、14日の12球団代表者会議と記者会見で詳細説明を行いました。

加藤氏に対しては、コミッショナー職を辞めるべきという意見がNPBに殺到しました。辞職すべきという主な理由は、「統一球変更の隠蔽に関わったに違いない」「不祥事なのに不祥事でないと断言した」といったものです。はっきりいって、組織マネジメントが出来ていない加藤コミッショナーを私は擁護するつもりはありません。しかし、彼への批判は言いがかり的なものも多く、ここは冷静に見なければなりません。

14日に発表された詳細説明については15日付けスポニチが詳しく書いているので、一部抜粋します。

「・・・NPBが11、12年に実施した計8回(うち再検査1回)の反発力係数検査では、平均値がアグリーメント(申し合わせ事項)に定められる基準値の下限0.4134を全て下回っていた。 (中略) 統一球は反発力係数の目標を基準値の下限に設置。製造に当たって生じる誤差(公差)を0.4034~0.4234の間で認めていた。厳密には、公差の下限内に検査結果は収まっているから規則違反とはならない・・・」

これを読むと、「何だ、統一球変更といっても、別にルール違反などないではないか」ということが分かるのです。反発係数という微妙な数字をピンポイントで固定することは無理なので、ある程度の誤差を認めているのはやむを得ません。これをミズノに厳格に迫れば、当然、ボールの価格が上がります。

もし、誤差修正のルールが変わったのであれば公表するべきでしょうが、既存ルール範囲内の調整であれば、公表しなくても別に責められる筋合いではありません。もっとも、11日の記者会見の時点で、「大きな変更があったのに、それを説明しなかった」という既成事実が出来上がっていたので、「誤差修正の範囲内だ」と説明しても、感情的な記者団が納得したかは定かではありませんが。

昨年までの「低反発球」のおかげで、「選手生命が短くなった打者がいる」という指摘が見られます。個人的には同情しますが、統一球はそのような選手個人の事情を越える目的で導入されたはずです。「低反発球に慣れた日本選手は、パワー比べの国際試合になると弱い。したがって、日頃から米国選手と変わらない環境で野球をするべき」といった目的が導入時にありました。それを、「ホームランが出ないから興業的にマイナス」といった理由で飛ぶボールに戻したら、加藤氏に限らず怒るのは当然です。彼が「反発係数引き上げに断固反対した」と伝えられていることも納得できます。

加藤氏が辞めても問題解決にならない

加藤氏は現状のようなキツイ批判を受けることもないだろうと思いますが、彼が留任しても組織的によくなることはないでしょう。逆に、加藤氏の代わりに、例えば王貞治氏がコミッショナーに就いても(ご本人は100%固辞でしょうけど)、問題の解決になるとも思えません。それは、加藤氏が繰り返し述べている「ガバナンス」機能がNPBにないからです。

ガバナンスとは通常、組織の「コーポレート・ガバナンス」を指します。これは、「株主や経営陣による企業(組織)の統治・管理」を意味します。企業の場合、取締役会が株主から経営の委託を受け、経営がうまくいかない場合、株主総会は取締役をクビにすることができます。これで相互牽制が効き、経営がうまく行くという理屈です。

ただ、取締役会を作り株主総会を開催する「形式的な」ガバナンスを作っても、なかなか理屈どおりに行かないことが現状です。社長が暴走して株主総会が取締役会を制御できない、発言力が強い大株主のために取締役会の権限が殆どないなどが典型です。

そもそもNPBは強いコミッショナーを望んでいない

NPBの組織はどうなっているのか?NPBは一般社団法人ですが、株主に相当するのが「社員」と呼ばれる12球団オーナーです。コミッショナーは「理事」ですが、社団法人の理事は「業務執行のために少なくとも一人おかなければならない」とされている「実務担当」に過ぎません。理事には会社法における取締役会のような強い権限はないのです。強いはずの取締役会でさえ、ガバナンスが機能しないことが多いので、ましてや社団法人の理事(コミッショナー)に多くを期待することは間違っています。

「WBC参加問題」や統一球問題などで、コミッショナーのガバナンスが全く機能していないのは無理ないことなのです。NPBの大きな流れは、これからも選手会の訴えや関係者によるマスコミへのリークによって決まるのでしょう。

これからのNPBはどうすれば良いのか?有力な社員(球団オーナー)同士で大きな意思決定をして、それを基に有能な理事(コミッショナー)に業務委託するしかありません。大きな問題でオーナー同士の利害が対立して、常にマスコミへのリークによって混乱したのがこれまでの姿で、この事態が変われなければ、NPBも変わらないのです。

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