本田圭佑選手のPKと成功するビジネスとの共通点

投稿日2013/06/11

本田圭佑選手のPKと成功するビジネスとの共通点

蹴る前に勝負が決まっていた本田選手のPK

6月4日、埼玉スタジアムで行われた、FIFAサッカーW杯アジア最終予選の日本チームの試合は感動的でした。何といっても、5大会連続のW杯出場を決めた本田圭佑選手の同点ペナルティキック(PK)が素晴らしかった。

彼のPKについては、「あのプレッシャーのなかで、よくゴールを決めた」「ゴールキーパーの真正面高目に蹴り込むのはすごい勇気と高度な技術が必要だ」といった評価が一般的ですが、私は違った側面に注目しました。

それは、相手選手がペナルティエリア内でハンドの反則を犯したとき、本田選手は迷わず自分が蹴る準備を始めたことです。チームには遠藤保仁選手というフリーキック(FK)の名手がいるし、他にも調子が良い選手がいたかもしれません。ところが、本田選手はそのようなことは歯牙にもかけないような態度で、ペナルティエリア内で蹴る準備を始めました。気のせいか、他の選手は「自分は蹴りたくない」とばかりに彼の周囲から一斉に遠ざかっていくように見えました。

「大場面での経験」は望まなければ得られない

本田選手のことを「俺さま的」で自分勝手な態度を取っていると決めつけることもできるでしょう。私はそうは思いません。彼の行動は「経験を増やして成果の確率を上げる行為である」と評価できます。

W杯出場がかかるような大場面でPKを決めるためには、いきなりその場に出ても成功するものではありません。また、いくら普段から練習しても大舞台でのゴールに直結するものでもありません。必要なことは、「大場面での経験」をいかに増やすかです。それがなくては、あの場面でゴールを決めることはできないはずです。

サッカーのPKは、どんなに素晴らしいキックを蹴っても、敵のキーパーがスーパーセーブをすればゴールになりません。また、風、気温、空気抵抗のわずかな違いによって、ボールがゴールポストから外れることもあります。逆に、ミスキックをしても、キーパーが反対方向に飛んだり、ボールをファンブルしたりすれば、「見事ゴール」という成果になります。つまり、キッカーができることは、「最高のキック」だけで、その後のキーパーのミスや自然条件はキッカーがコントロールできないことなのです。

「大場面で最高のキック」をするには、「大場面での経験」が絶対必要です。サッカーでFKやPKを蹴らせてもらえるのは、技術的に優れたごく限られた選手だけですが、本田選手を押しのけてキックしようとする選手がいないと、彼等の大場面での経験が減ります。こう考えると、本田選手の次の世代の全日本は大丈夫かと心配になるのです。

挑戦意欲が下がるプロセスとは

「経験と成果」の話は何もサッカーに限ったことではありません。若い学生やビジネスマンにも普通にあてはまる話です。「最近の若者は未知なることに挑戦する意欲が低い」という指摘が聞かれます。「本当にそうだろうか」というのが私の正直な感想です。いつの時代でも挑戦する意欲が低い若者は一定比率必ずいるからです。では、何故、挑戦する意欲が低くなるかを分析してみます。

ここに会社でゲームアプリ開発の仕事をしている若いビジネスマン(仮にA君)がいるとします。スマホの普及によって、ゲーム開発の構造が変わり、この業界は急激な進化を遂げています。次々に新しいソフトが開発され、ヒットするのはごく僅か、また流行り廃りが目まぐるしく、とても厳しい市場です。結果的に、アイディアも他社と似通ったものになります。

そこで、A君は考えました。「アイディアが煮詰まると、古いものが流行る。音楽だって、1970年代、80年代の曲が流行っているじゃないか」ということで、同じころ流行ったブロック崩しゲームとポケモンゲームを組み合わせることを思いつきました。開発者が試作したソフトが製品化されるには、社内の開発会議を通さなければなりません。A君は自分のアイディアを自信満々でプレゼンしましたが、上司は厳しい口調でNGを出します。「新鮮味がない」「スリルが感じられない」「君はユーザーの気持ちが分かっていない」といった理由を突きつけられ、A君はやる気を失います。

その後、惰性で仕事をしていたA君は、ある日愕然とします。ガンホーが開発した「パズル&ドラゴン」が大ヒットしていることに気づいたからです。「何だ、これは自分のアイディアと同じじゃないか。商品化すればやっぱりヒットしたんだ。こんなことなら上司をもっと真剣に説得するべきだった・・・」と。

アイディアの過大評価と経験の過小評価を避けろ

A君の行動、考え方のどこが問題なのでしょうか。まず、自分の「アイディア」を過大評価し、「経験」の重要さを理解していないことです。

現在のようにネットを介して瞬時に情報が拡散する社会では、アイディアに大した価値はありません。むしろ、「アイディアを実現する経験」にこそ価値があります。上司、投資家、顧客、ネットユーザーなど、自分のアイディアを理解させて説得する相手はたくさんいます。このように、自分の望む成果を実現したいのであれば、必ず「第三者の評価」が必要となります。多くの人を説得するためには豊富な経験が必要です。それも単なる経験ではなく、ワンチャンスで相手を説得しなければならないプレッシャーがかかる場面での経験です。これこそ、サッカーのPKで「自分が蹴る」とボールを奪い合うことと一緒です。

また、経験は一度や二度で済むのではなく、繰り返し蓄積することが大事です。そうすることによって、初めて質が向上し、大場面での成果につながります。上司に一回ダメだしされただけで諦めたA君は、自分のアイディアをブラッシュアップする機会を失ったのです。本田選手のように大場面でのフリーキックを繰り返すことで、ワンチャンスでのキックの質を磨かなければなりません。

自身の行動と成果を混同するな

挑戦意欲を失っている若者は、行動の質を向上させる努力を怠っているとともに、「自身の行動と成果」を混同していることが多いです。自身の行動は自身で完結していますが、成果は自身以外の要素が関わっているからです。

既に述べたとおり、キッカーができるのは最高のキックのみで、ゴールという成果は他の多くの要素が関係しています。同様に、A君ができることは質の高いプレゼンのみで、商品として採用されるかどうかは、上司の評価次第です。A君は上司の評価をコントロールすることができません。そうであれば、A君は自分でコントロールできる行動に専念するしかないのです。「上司の考え方を変えよう」という無理なことを考えるから、「上司は自分のことを嫌っている」とあらぬ方向に考えが反れ、挑戦意欲が下がるわけです。自分が行うべきことは「経験を増やしてプレゼンの質を上げること」だけだと正確に理解していれば、挑戦意欲も持続できるはずです。

若者が挑戦意欲を持続するには、人それぞれの「大場面」での経験の蓄積、自分の行動と成果を混同しないことが必要です。問題はいかに一歩を踏み出すかですが、事前に大きなプレッシャーを感じても、実際に経験すると「なんだ、大したことない」となるものです。例えば、海外留学にあまり乗り気でない大学生が実際に留学を経験すると、途端に海外勤務に積極的になります。少しだけハードルが高い経験を積めば、比較的楽に次へつながることを知ってもらいたいものです。

Copyright©2013 Hiroyuki Ozaki. All Rights Reserved.


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