500社中「一人との出会い」で我々は生き残りました! ゲスト/ユーグレナ社長 出雲充さん その2

投稿日2013/05/31

Yahoo! Newsに投稿した記事です。

前回、創業時の思いを中心にお聞きしました。出雲さんはいつ会っても爽やかですが、数年前より迫力が増したという印象を受けました。さまざまな危機を乗り越えてきた結果に違いありません。

「リードインベスター」に出会わないとベンチャーの明日はない

ベンチャー企業の社長は会社立ち上げ後、お金のことが頭から離れなくなります。最初は売上がなくて赤字で始まりますが、銀行は設立直後のベンチャーにお金を貸してくれません。パソコン数台とマンション一室でスタートできるゲームアプリ等の開発と違い、バイオ企業は研究施設を揃えなければならないので、赤字が大きくなります。ユーグレナは東京大学内のインキュベーション施設を安く使えましたが、本格的な事業展開をするには資金集めに奔走することが必須です。

銀行が頼りにならないので、頭を下げる相手はベンチャーキャピタル(VC)でした。ユーグレナが資金集めをした2005年当時は「ライブドアショック」により新興企業の株価が暴落し、ベンチャーの資金集めには最悪の環境でした。

尾崎: 2005年にVCからの出資を頼んで回った時は本当に大変だったでしょうね。

出雲: ええ、かなり苦労しました。

尾崎: VCは実に日和見的で、状況によって極端な反応をしますよね。他社が出資していない案件には絶対出資しないVCが多いですが、有力なVCがリードインベスター(リード:出資先を中心的に支援するVC)になると、掌を返して寄って来ます。VCとの交渉において、こういうふうにすればよかったという反省点はありますか?

出雲: 尾崎先生ご指摘の通り、日本のVCは、リードの影響が強いです。銀行もメインバンクに名寄せする(メインバンクが貸すならば自分も貸す)という習慣があります。ということはリードがしっかりしていれば、資金調達もうまくいくし、逆であれば悲惨なことになります。こういうことは実際にやってみないとわかりませんでしたね。

尾崎: 最初はリードの役割をあまり意識していなかったのですね。ちなみにリードはどこでしたか?

出雲: インスパイアです。元マイクロソフト日本法人社長の成毛眞さんが取締役ファウンダーを務めるファンドです。

尾崎: 成毛さんはファンドのオーナーで、彼がトップダウンで投資の可否を決めますよね。どういうふうに成毛さんを落としたのですか?

出雲: どのVCからも「どこのVCがリードですか?」と聞かれ、「リードはまだいません」と答えると、そこで話が終わりました。そうするうちに、成毛さんが「話を聞きたい」と連絡して来てくれたのです。

尾崎: ITに強いファンドなので、出雲さんのバイオ事業にあまり詳しくないとは思いませんでしたか?

出雲: そうです。初め、インスパイアはITに強いVCだろうと決めつけて、正直「冷やかしなのかな」と思っていました。ところが、成毛さんはどのVCよりも本質を突いた質問をしてこられるのです。例えば、「ミドリムシは高濃度CO2を吸収してすごいんです」と私が説明しても、大半のVCは無反応でした。これに対して成毛さんの反応だけは違って、「それでは納得できない。ミドリムシも他の植物と同じで光合成をしている。それなのに、他の植物は高濃度CO2では窒息死して、ミドリムシだけは元気というのは論理的ではないじゃないか」と。私はこの成毛さんの反応に感銘を受けましました。

尾崎: どうしてミドリムシは高濃度のCO2でも生きていけるのですか?

出雲: ミドリムシは5億年以上も前からあまり進化していません。5億年前の地球上の大気には酸素がほとんどなくて、CO2濃度の方が圧倒的に高かったのです。そういう時代から生息してきたミドリムシやワカメの遺伝子には、CO2が高濃度でも光合成して生きる機能が今の環境においても、未だに残っているわけです。ところが、他の植物はそういうことができません。成毛さんからは他にも本質を突く質問がどんどん出てきました。

尾崎: ビジネスの本質はITもバイオも同じということですね。

出雲: その通りです。彼を IT の人だと決めつけていた自分が間違っていたことを痛感しました。2回目のミーティングでは私も完璧な準備をして深い質問にも答えられるようにしました。そこで2回目で投資を即決されて、「自分たちがリードをやる」と言っていただいたんです。タイムマシンに乗って当時に戻れば、「リードが大切」「 IT など専門分野を決めつけてはいけない」ということがわかりますから、要らぬ苦労をせずにすんだなと思います。

横並びの日本企業の攻略は常識と違う行動が必要だ

インスパイアがリードになり、必要資金をVCから調達して、ユーグレナはひと息つきました。これは出雲さんのことではありませんが、経営に慣れていないベンチャーの社長にはVCからの出資金を全部使って良いと勘違いする人がいます。使っただけ赤字になるし、出資金はそのうち底をつきます。ひと息つくやいなや、社長は毎期の安定した売上を確保しなければならないのです。

尾崎: VCの次は商品開発と販売ですね。御社と伊藤忠との関係ですが、同社とは機能性食品販売について提携しているのですね?

出雲: 販売だけでなくて、原料粉の調達、中国での販売については OEM (相手先ブランド名製造)も含めて提携しています。特に海外ビジネスは専門的なので、伊藤忠に現地での販売をお願いする予定です。

尾崎: 提携相手はすんなりと見つかったのですか?

出雲: 伊藤忠含めて500社くらい売り込みに行きました。初対面でも門前払いはなく、皆さん話はきちんと聞いてくださいました。

尾崎: 門前払いがなかったとは、驚きですね。聞いたことがないベンチャー企業は冷たくあしらわれるのが普通ですが・・・

出雲: そうなんです。皆さん意外な話だとおっしゃいます。「東大でミドリムシの研究をしていました」というと、担当者は、とりあえず興味を持つようです。ミドリムシのことを皆さんが理解しているわけではないですが、一回、聞いてみようという気になるみたいです。先方の担当者も話を聞くと、「これは面白そうじゃないか」と、どんどん盛り上がってくるんです。500社も回っていると、相手が興味を持っているかどうかすぐわかるようになりました。ところが、最後に必ず同じ障害にぶち当たります。

尾崎: どんな障害ですか?

出雲: 担当者との交渉が進むと稟議書を書いてもらいますが、必ず聞かれることがありました。「これだけ素晴らしい商品であれば、他に、どこの企業が取り扱っていますか?」という質問を受けるのです。

尾崎: VCと全く同じ状況ですね。

出雲: 全くそうです。リード含めて、敢えて先駆者になる人がいないのが、日本のビジネス界の最大の欠点です。これが改善されなければ、「アベノミクスの第3の矢」(成長戦略)も絶対機能しないと思います。

尾崎: この傾向は他社がやっていれば自分もやるという日本企業特有の行動パターンといえます。本来、ビジネスは他社と違うことを先駆けてやらないと勝てないというのが原則ですがね。

出雲: まさにペンギンと一緒ですよね。海を前で牽制し合い、最初に一羽のペンギンが飛び込めば、あとは、それを真似てボチャンボチャンと飛び込んでいくのです。
みんなが横並びで、「実は御社が初めてなんです」と言うと、相手は「しまった」という顔をします。「そういうのウチはやっていないんでね」という言う人もいれば、「出雲さん、それじゃダメだよ」とはっきり言ってくる人もいます。こういうパターンなのだと気が付くのに徒に時間を費やしてしまいました。

尾崎: 横並びはサラリーマン企業の特徴ですけど、社長の意見が強い中小企業はそうでもないです。交渉相手には中小企業の社長もいましたか?

出雲: まず大手企業にお願いしたいと思いましたので、大手に話を持っていきました。

尾崎: そうです、ベンチャーが提携するべき相手は業界トップです。トップが最初の取引先になればこそ、横並びが起きます。伊藤忠はどうやって説得したのですか?

出雲: これも全くの偶然です。伊藤忠の担当者の方が本当に親身になってくださったんです。その方から過去に伊藤忠社内で、どんな稟議が通って、通らなかったという社内事情をきちっと教えていただきました。一緒に稟議書を作っては破るを繰り返して、1年間つき合って頂きました。私もここまでやって、なおかつ伊藤忠が取り上げてくれなかったら、外苑前の伊藤忠本社に討ち入りをする覚悟でした(笑)。

尾崎: 腹を切るような覚悟だったのですね(笑)。ところで、一度出して否決された稟議書はもう二度と出せなくなりますから、1年間内容を精査したということですか?

出雲: いえ、今回営業課長の稟議を通ったから、次は企画部の課長という形で順次続けていたら1年経ったということです。「この課長は過去にこんな稟議を通したから、この内容で大丈夫だよ」と。それが通れば、次といった形で続けました。

尾崎: なるほど。まさに「1人1殺」ですね。1人1殺が面倒になって、何となく相手の窓口に任せて失敗する人が多いです。

出雲: それは無謀なやり方ですよ。それにしても、担当の方には本当によくつき合って頂いたと思います。

尾崎: 出雲さんの成功の秘訣は、「執念と丁寧な対応」だったのでしょう。伊藤忠の担当者はどうしてそこまで親身になってくれたんだと思いますか?

出雲: この方は伊藤忠プロパーの社員ではないんです。伊藤忠に転職する前は、専門の商社勤務でした。今でこそ、伊藤忠食料カンパニートップの専務以下皆さんが、「ミドリムシ、ミドリムシ」と言ってい頂いていますが、そのような状況を作ったのがこの担当者です。この方が、もし伊藤忠プロパーの社員であれば、同社との提携はなかったかもしれません。

尾崎: この人はミドリムシがブレイクすると、最初に閃めいたんでしょうか?

出雲: 他の企業の担当者も閃いてくれたとは思います。ところが、その後に覚悟を決めてつき合っては頂けなかったということです。

尾崎: 閃いて、かつつき合ってくれる確率が500分の1だったということですね。ビジネスで「これは行ける」と閃く人はたくさんいますが、それを形にする執念を持つ人はぐっと少なくなります。その縮図のような話です。

出雲: その方も最初に伊藤忠への転職前、「自分は苦労したんだ」ということをおっしゃっていました。だから、我々がいかに大変かを理解していただけたのでしょう。

ミドリムシが「地球にやさしいジェット機」を作る!

最後に今後の事業展開、夢を語ってもらいました。バイオ燃料と機能性食品をどういう形で生かしたいのか興味があります。

尾崎: 御社はJX日鉱日石エネルギー、日立プラントテクノロジーと提携して、バイオジェット燃料を開発されています。一方、現在の主力ビジネスは機能性食品販売です。株主の期待はどちらが高いですか?

出雲: おそらく現状は前者への期待が高いと思います。

尾崎: 経営資源をどのように分散するかという難しい課題に直面していますね。

出雲: それこそがミドリムシの難しさと強みだと思います。ミドリムシはいろいろな能力があるので、選択肢が増えます。ただ、「バイオ燃料のためにミドリムシ食品をやめることはない」と宣言しています。

尾崎: 最後に、すぐにでも実現したいこと、将来の夢を聞かせて下さい。

出雲: ミドリムシ燃料で飛び、機内でミドリムシクッキーを提供する「地球にやさしい高級感を持ったジェット機」を早く実現したいです。さらに、ミドリムシの最終的なターゲットは宇宙燃料になります。宇宙ステーションでは、24時間太陽光を受け、光合成ができます。宇宙ステーションの維持コストのうち、地上から運ぶ食料や水の負担が大きいはずです。コスト削減にはステーション内で水を循環させ、食料を生産するシステムが有効です。ミドリムシは、宇宙食料生産の一番手に来ると確信しています。

尾崎 今日はありがとうございました。

●対談を終えて
ここまで疾走されてきた出雲さんですが、初期の経営危機を率直に語ってくれました。危機から得た知恵を今後の経営に活かされることでしょう。商品のユニークさを強味に、彼なら経営資源の効率的な配分という難しい課題を解決するに違いありません。


出雲充(いずもみつる)氏プロフィール/1980年広島県生まれ。2002年、東京大学農学部を卒業後、同年東京三菱銀行入行。2005年、株式会社ユーグレナを創業、社長となる。2012年、東証マザーズに上場を果たす。

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