「ミドリムシ」で集客、「ユーグレナ」でエネルギー・健康問題に挑戦!ゲスト/ユーグレナ社長 出雲充さん

投稿日2013/05/29

Yahoo! Newsに投稿しました。

ミドリムシ」で集客、「ユーグレナ」でエネルギー・健康問題に挑戦 

東証マザーズに昨年12月に上場した株式会社ユーグレナが注目の的になっています。社名の「ユーグレナ」は同社の主力商品名でもあります。ユーグレナはミドリムシの一種で、「バイオ燃料」と「栄養が豊富な機能性食品」の原料という二つの顔を持ちます。「エネルギー」と「健康」というアベノミクス・成長戦略のキーワードにフィットしているため、ユーグレナは現在注目の的です。株価は上場初値から一時10倍になり、時価総額も約1,500億円になりました。

そこで、5月にユーグレナ代表取締役社長・出雲充さん(東大卒若者起業家)を飯田橋駅近くの本社に訪ねました。出雲さんのことは渋谷の小さなオフィスに間借りしていた7年前から知っていますが、爽やかさは相変わらずです。今やトレードマークとなった派手な「ミドリムシ色」のネクタイを締めて私を迎えてくれました。

ユニークな商品だから株主がセールスマンになってくれる

尾崎: 上場以来、株価が10倍以上になりましたが、素晴らしいですね。今の状況を率直にどう思いますか?毎日株価が評価され、「バブルだ」と言われることもあり大変でしょうが、本当にすごい!

出雲: 沢山の投資家に私どもの会社を知ってもらい、株を保有して頂いているわけですから、「ありがたい」の一言です。最近一番多い質問は「生活が変わりましたか?」というものですが、生活は何も変わっていません。面白い話は何もありません。テレビも電子レンジもない生活を10数年続けています。

世間では、おそらく半分以上の人が、ミドリムシのことをアオムシと同じものだと思っていますが、株主の方々は、ミドリムシがワカメなどの藻類と同じだということをご存知です。株主の方々が我々の研究、ビジネス、ビジョンの発信源となっていただいているわけで、こんなにありがたいことはありません。

尾崎: それが IT 企業との違いですね。

出雲: そう思います。 IT 企業の場合は、株を持ってもらうだけでは会社の宣伝になりまませんから。

尾崎: この話は重要なポイントですね。一口に「IT企業」と言うだけでは、相手に事業内容を分かってもらうことは大変です。ソーシャルネットワーク(SNS)やゲームを開発している企業は世界中に数えきれないほど存在します。
「自分の会社は素晴らしい」と訴えても、何故そうなのかを相手に納得させるのは簡単ではありません。何故なら、同じ事業分野でミクロの違いの競争をしているからです。同じバイオベンチャーでも、医薬品開発企業は専門家でなければ良さが理解できないので、厄介です。その点、ミドリムシはユニークな製品で強い印象を与え、説明すれば、社会に良いことをしていると理解してもらえますよね。

出雲: 我々は株主の皆さんにファンになっていただくことが必要なのです。株主以外からはミドリムシは誤解されがちです。ミドリムシで健康になると言っても、なかなか理解してもらえないのが現状です。したがって、株式分割をして株主の人数を増やすというのは非常に有効な方法です。

尾崎: 他社と全く違う商品を提供することが、株主が夢を共有してくれるために不可欠ですね。最近は京大山中教授の iPS細胞がそのような対象になっていますが、実用化にはまだまだ時間がかかります。ミドリムシは既に製品化されていることが、iPS細胞と大きく違いますね。

何故、「ユーグレナ」「ミドリムシ」ブランドを使い分けなければならないのか

同社が創業間もない頃は「ユーグレナ」という名称を使って商品説明をしていました。ところが、最近は、マスコミ等で「ミドリムシ」を多用しています。出雲さんが最近出された本の題名も「僕はミドリムシで世界を救うことに決めました」で、「ユーグレナ」は副題にこっそり載っているだけです。賞品ブランドをユーグレナからミドリムシに変更したのだろうか?この疑問を出雲さんにぶつけました。

出雲: 実はそれは難しい問題です。我々はユーグレナを前向きにミドリムシに変更したわけではありません。私ども一時は「ユーグレナ」という名前にしがみついて、社内で「ミドリムシ」を NG ワードにしていました。これは失敗だったと思います。

お客さんは納得してユーグレナを買っていただいていますけど、家に帰ってふと「ユーグレナってなんだったんだっけ」と思う。そこで、インターネットで調べると、グーグルでもヤフーでも検索上位に「ユーグレナはミドリムシ」という結果が出てくるのです。そうなると、「本当はアオムシだということを隠して、ユーグレナという何だかおしゃれな名前をつけて私をだまして販売したんだ」という感想持つ人が結構いらっしゃいました。これを教訓に、私どもは、「ユーグレナ(和名の学術名:ミドリムシ)」と必ず両方の名前を併記するようにしています。

尾崎: つまり、ブランドに関しては今、過渡期ですね。

出雲: そう、過渡期です。むしろ「ミドリムシ」という名前で多くの人の関心を集め、それにユーグレナというスタンプを押して商品をお渡しすることを考えています。このため、株主の方々には「ユーグレナ=ミドリムシ」を広げることに協力していただいています。

尾崎: では、ユーグレナ、ミドリムシどちらで行くかは今思案中ということですか?

出雲: いえ、我々の商品はあくまでユーグレナです。ただ、ユーグレナという名前を聞いて即ミドリムシだなと納得していただくレベルに知名度が達していないということです。ミドリムシという言葉はほぼ100%の人がご存知ですが、私どもとしてはユーグレナをブランドのコアに設定することは変わりません。

尾崎: ミドリムシは光合成を行いながら鞭毛運動で移動する植物と動物の特徴を持っており、アオムシとは全く別種類の生物です。顧客からの誤解は出雲さんとしても全く想定外だったのですね。ブランド確立は今後も経営上の重要なテーマとなるでしょう。特に、ユーグレナの機能性食品が売れてくると、「まがい物」も増えてくるので、対策が必要です。「ミドリムシ」という一般的な名称を使った他社製品が増えても、「ミドリムシ=ユーグレナ」というダブルのブランドを作っておけば、強い対抗策になります。

保守的なはずの東大生が起業した本当の理由

出雲さんは東大在学中から起業を志し、その方向性はぶれなかったと色々な場で語っています。ライブドアの堀江さんが逮捕前に注目されていた時は、若者の起業への憧れは結構高かったと思います。ところが、最近の大学生と話すと、起業や海外勤務どころか、リスクが低い大企業や公務員への就職志望がとても強いです。この傾向は、アベノミクスで好景気になっても、簡単には変わらないでしょう。何故なら、若者は現実を冷静に分析しており、若いからといって大胆な行動を取るとは限らないからです。出雲さんが同級生と違う起業を選んで後悔しなかったのか、私は前から聞いてみたいと思っていました。

尾崎: ところで、出雲さんにお聞きしたかったのは家庭環境と学歴です。お父さんがサラリーマンでお母さんが専業主婦だったそうですね。若くして起業する人は実家が商売をやっていることが多いですし、東大生はあまり起業しません。この意味で出雲さんはユニークな存在ですけれど、いろいろなインタビューで、「自分は純粋にやりたいから起業したんです」と答えられています。しかし、実際にやってみると、「やっぱりやめとけばよかった」と後悔することも多かったと思うんです。これはどのように乗り切っていかれましたか?

出雲: 難しい質問ですね。逆に始める前はこんなに大変だとは正直思っていませんでした。私の生まれ育ちは多摩ニュータウンで、父親がサラリーマンでした。冗談でなく、世の中はサラリーマンと公務員しかいないと思っていたんです(笑)。素朴にそう思っていましたので、自分のキャリアにベンチャーの社長という選択肢は全く入っていませんでした。選択肢に入ってないわけですから、社長がどれだけ大変かという知識も全くありませんでした。

尾崎: 誰かの影響を受けたとか、背中を押してもらったということは全くないんですね?

出雲: ないですね。私が会社を作った直接的な理由は法人格が欲しかったからなんです。研究室のビーカーでミドリムシを培養する場合はいいですけど、巨大なタンクを借りて大量培養することは個人ではできません。ツタヤでビデオ借りることとは訳が違います。いくら研究のためといっても、個人では契約書を作ることも、銀行口座も作ることもできませんしね。

尾崎: その話、とても面白いですね。

出雲: どんなに大変か知らずに始めたということは、安易だったなと今では思います(笑)。

尾崎: 様々な起業家調査を見ると、「実家が商売をしていたから自分が起業することに抵抗がなかった」という回答が多く見られます。ところが、「実家が商売をしており、父親の仕事がいかに大変か子供ながらに見ていたので、自分は起業家になりたくない」という声も少なくありません。出雲さんはまったく白紙で臨み、これが強さの源泉になったのかもしれませんね。

若者の中には、「自分の能力でできることはここまで」と自ら限界を設定する人が少なくありません。ところが、能力は経験、試行錯誤によって培われるものです。ただ、「起業はハードルが高い」と周囲が諭すので、残念ながら「起業家としての経験」をスタートする手前でやめる人が多いのです。「安易だった」と後で知った出雲さんは、ある意味幸運だったと思います。



ベンチャー失敗の主因「創業チームの仲間割れ」をどのように防いだか

1997年の米国起業家調査によると、次のような結果が出ています。

「米国MBA履修者の50%以上が卒業後数年以内に起業し、ベンチャー企業の63%が起業後6年以内に失敗する。」

ベンチャーで成功することは容易ではないが、特に初期段階でつまずくことが多いのです。ベンチャー企業といっても、設立当初は親睦会や大学のサークルと実態は変わりません。少人数で、途中でやめても大して困らないので、創業者同士の仲間割れで空中分解することが少なくありません。ユーグレナも同じような危機があったはずで、それをどのように乗り切ったのか聞いてみました。

尾崎: 出雲さんは、鈴木さんと福本さんの三人で2005年に会社を始められたんですね。ベンチャー企業の創業直後は、メンバー同士がけんかしてチームが崩壊することがよくあります。大きな会社に成長すると、途中でやめるわけにいかなくなりますが、所帯が小さい間はやめようと思えばやめられますね。そういうことはありませんでしたか。

出雲: 我々は3人で始めたのでうまくいったと思います。スタートアップのベンチャーは正直、喧嘩ばっかりしていますよね。他のベンチャーで、2人で始めたところは「ケンカ別れして解散しました」という話をよく聞くのですが、我々はそういうことがありませんでした。鈴木と福本がけんかしていても、私が入って「まあまあ」となだめることができたのです。

尾崎: 確かに、2人だけだと喧嘩すれば即終了です。しかし、3人が良いと言っても、2人が喧嘩していると、他の1人が、どちらかに加担して、結局崩壊するということもありますよね。仲間割れは若い人だけでなくて年寄りが起業してもよく起きて、ベンチャー創業が早目に失敗する主要な原因になっています。出雲さんたちは何か工夫をされましたか?

出雲: 3人の役割が全く違っていたのがよかったんでしょうね。「研究と営業が喧嘩してどうするんだ」ということをよく言っていました。

●対談を終えて

ユーグレナのような新興企業は自社を知ってもらうことに大きなエネルギーを要します。同社はエネルギーと健康という二つのキーワードとユニークな製品を持っているため、この点はそれほど苦労していないように見えます。順調にテイクオフしたように見える同社ですが、それは大きな試練を乗り越えた結果のはずです。次回はそのポイントをお聞きします。


出雲充(いずもみつる)氏プロフィール/1980年広島県生まれ。2002年、東京大学農学部を卒業後、同年東京三菱銀行入行。2005年、株式会社ユーグレナを創業、社長となる。2012年、東証マザーズに上場を果たす。

Copyright ©2013 Hiroyuki Ozaki. All Rights Reserved.



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